ミトコンドリアは増やすより減らした方が良い? 古いミトコンドリアを除くと炎症が軽減!? (2019年最新研究)
ニュース/レビュー
今回はマウスにおいて、損傷したミトコンドリアを排除すると慢性炎症性疾患を軽減できるという研究報告です。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の最新研究がプレスリリース(英文)されましたので、それを翻訳したものをご紹介します。
この記事のもくじ
ニュースタイトル「マウスにおいて損傷したミトコンドリアを排除すると慢性炎症性疾患を軽減する」
コリンキナーゼ阻害剤による治療は、免疫細胞に損傷を受けたミトコンドリアを一掃するよう促し、したがってNLRP3インフラマソーム活性化を低下させ、炎症を予防する。英文執筆者:Heather Buschman, PhD
炎症はバランスのとれた生理学的反応です。 ー 身体は侵襲性の病原体や外来からの刺激物を除去する必要があり、その目的の生理反応として炎症が起こりますが、過度の炎症は健康な細胞を傷つけ、老化や慢性疾患の一因となります。炎症を適切に管理するため、免疫細胞はNLRP3インフラマソームと呼ばれる分子機構を使用しています。NLRP3は健康な細胞では不活性ですが、細胞のミトコンドリア(エネルギー生成細胞小器官)がストレスや細菌毒素への曝露によって損傷を受けると「スイッチオン」されます。ところがNLRP3インフラマソームが「オン」の状態のままになってしまうと、 痛風 や 変形性関節症 、 脂肪肝疾患 、また アルツハイマー病 および パーキンソン病 などのいくつかの慢性炎症状態を引き起こすことになります。カリフォルニア大学サンディエゴ医科大学の研究者達は、マウスを用いた研究でいくつかの慢性炎症性疾患を治療する助けになるかもしれない独自の切り口を発見しました。それは、NLRP3インフラマソームを活性化する前に、損傷したミトコンドリアを排除するよう細胞に働きかける、というものです。
2019年4月11日発行の Cell Metabolism 誌に発表されたこの研究は、上席著者であるカリフォルニア大学サンディエゴ医学部の薬理病理学およびBen and Wanda Hildyardミトコンドリア病・代謝性疾患寄付講座のMichael Karin教授と、筆頭著者である同研究室のElsa Sanchez-Lopez博士研究員が行いました。
Nature 誌で発表された2018年の研究で、Karin教授のチームは損傷したミトコンドリアがNLRP3インフラマソームを活性化することを示しました。また、マイトファジーと呼ばれる細胞内リサイクル機構によって、選択的にミトコンドリアが分解除去されると、NLRP3インフラマソームが不活性化されることを見出しました。
Karin教授は次のように話しています。
「この発見後、我々は意図的にマイトファジー(オートファジーを利用した古くなったミトコンドリアの選択的分解機構)を誘発することで損傷したミトコンドリアを排除し、NLRP3インフラマソーム活性化を予防的に阻害することができないかと考えました。しかし、当時はマイトファジーを誘発させる良い方法がなかったのです」
つい最近、Sanchez-Lopezは、マクロファージが、代謝に重要な栄養素であるコリンの取り込みをどのように調節するのかを研究していましたが、その過程で、酵素コリンキナーゼ(ChoK)の阻害剤が、マイトファジーの開始できることを発見しました。ChoKが阻害されると、コリンはミトコンドリア膜に取り込まれなくなり、その結果、細胞によって障害を受けたミトコンドリアと認識され、マイトファジーにより除外されたのです。
「一番肝心なことは、損傷したミトコンドリアをChoK阻害剤で取り除くことによって、ようやくNLRP3インフラマソーム活性化を阻害することができるようになったという点です」
この新しい方法が、生体内でNLRP3インフラマソームを制御できるかどうかを、マウスを用いて試験しました。その結果、ChoK阻害剤による治療が尿酸(蓄積によって痛風の発赤を引き起こす)と細菌性毒素による急性炎症を予防することを明らかにしました。
ChoK阻害剤治療はまた、NLRP3遺伝子の突然変異が原因の遺伝的疾患、Muckle-Well症候群に関連する慢性炎症で見られるいくつかの検査項目の数値を改善することができました。例えば脾臓の大きさは1つの判断基準で、炎症の程度が重くなるほど脾臓の肥大が見られます。Muckle-Well症候群のマウスの脾臓は、平均して通常のマウスの2倍の大きさになりますが、ChoK阻害剤治療の後には通常のマウスの脾臓と同程度の大きさでした。
NLRP3インフラマソームは、非常に強力な炎症誘発性分子であるサイトカイン(IL-1βおよびIL-18)の放出を引き起こすことで炎症を促進します。 Karin教授によると、IL-1βに対する薬剤はありますが、IL-18にはありません。今回見出されたChoK阻害剤は、どちらのサイトカインも減少させることができます。
「IL-1β、IL-18双方を阻害する治療を必要とするであろう疾患は、全身性エリテマトーデスや変形性関節症など、他にも複数存在しています」とKarin教授は述べています。
ーーー 翻訳ここまで ーーー
引用ニュース & 原著論文
🔵 プレスリリース(英文):In Mice, Eliminating Damaged Mitochondria Alleviates Chronic Inflammatory Disease( University of California – San Diego)April 11, 2019🔵 原著論文:Choline Uptake and Metabolism Modulate Macrophage IL-1β and IL-18 Production (Cell Metabolism, 2019)
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Seigoの追記
ダメになったミトコンドリアを掃除できないと、さまざまな炎症に関連した病気を引き起こす可能性があることを見つけた素晴らしい論文ですね。パーキンソン病もperkin(パーキン)という分子がうまく働かないため、悪いミトコンドリアの除去がうまくいかないことが分かっているそうです。
細胞の掃除がうまくいかないと炎症や老化が促進されてしまう病気が次々と明らかにされています。
この論文を読んで改めて「デトックス」や「プチ断食」の大切さが分かってきたような気がします。
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
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