果糖ぶどう糖液糖の危険性上昇!? 大腸がんの増殖を促進することが判明! (Scienceからの論文)

ニュース/レビュー

果糖ぶどう糖液糖がヒトで大腸がんのリスクを上げるという疫学調査が先日ありましたが、今回はそれを動物実験で証明した報告となります。

果糖ぶどう糖液糖は直接にガンの増殖を促し、腫瘍グレードも上げてしまうそうです。

大腸にポリープやがんを持っている方は、病院で小売店やコンビニで売っている果糖ぶどう糖液糖の入ったジュースやスナックは避けた方がよいでしょう。

この研究は米国ベイラー医科大学がScienceに発表したもので(Scienceはネットから無料で閲覧できませんが)、その研究のレビュー記事が米国ベイラー医科大学から発表されました(英文)。

今回はそれを翻訳し、分子メカニズムの図も見やすくしましたので、ここでご紹介します。

ニュースタイトル「高フルクトースシロップがマウスの腸内腫瘍を促進」

英文執筆者:Allison Mickey


砂糖はがんに直接作用してがんの成長を促進するのでしょうか?

この答えは、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)とワイルコーネル医科大学院(Weill Cornell Medicine)の研究者らの研究によると、少なくともマウスに関して言えば、それは「はい、その通りです」ということになると思われます。「サイエンス」誌に発表された彼らの研究で、毎日ある決まった量の高フルクトースコーンシロップ日本では 果糖ぶどう糖液糖 と呼ぶ ― 約355mL(12オンス)の砂糖入り飲料に相当 - を摂取したところ、この疾患のマウスモデルにおける腸の腫瘍の成長を促進することを明らかにしました。肥満とは無関係です。チームはまた、砂糖飲料の摂取ががんの成長に直接影響を与えることになるメカニズムを発見し、潜在的な新しい治療戦略を示唆しました。

共同研究者のベイラー医科大学分子人類遺伝学部のチーイェ・ユン助教(Dr. Jihye Yun)は、「観察研究例が増加するのに伴って、砂糖飲料の摂取、肥満および大腸がんの間の関連性についての意識が高まって来ました」として、「現在の考え方では、糖分は過剰に摂取すると肥満に繋がることからして、健康に有害であるとするのが主流です。肥満は明らかに、大腸がんを含むさまざまな種類のがん発生リスクを高めることはわかっています。しかしながら、糖分の摂取とがんの間に直接的な因果関係が存在するかどうかは不明でした。それゆえに私は、ワイルコーネル医科大学のポスドック(Postdoc/博士課程修了研修生)として、この重要な問題に取り組むことにしたのです。

まず、ユン助教らは、APC遺伝子が欠失した初期結腸(大腸)がんのマウスモデルを作成しました。「APCは大腸がんの門番です。このタンパク質を削除することは自動車のブレーキを取り除くのに似ています。それがなければ、正常な腸細胞はその成長が止まることも、死ぬこともなくポリープと呼ばれる初期段階の腫瘍を形成します。大腸がん患者の90%以上がこの種のAPC突然変異をもっています」とユン助教は述べています。

このマウスモデルの疾患を用いて、この研究チームは糖質含有水を摂取が腫瘍の発生にどのような影響を及ぼすかを調べました。使用した甘い水は25%高フルクトースコーンシロップ(以後 果糖ぶどう糖液糖 と呼ぶ)でしたが、それは一般的な飲み物に使用される主な甘味料です。 果糖ぶどう糖液糖 は、グルコースとフルクトース45:55の比率で含んでいますフルクトースのほうが多いので「ぶどう糖果糖液糖」ではなく「果糖ぶどう糖液糖」と呼ばれる)。

果糖ぶどう糖液糖はほとんどの飲料や食べ物に入っている(出典:Speedy McVroomによるPixabayからの画像)


APCモデルマウスに 果糖ぶどう糖液糖水 をボトルで与え、自由に飲ませるとマウスは1ヵ月で急速に体重が増えました。マウスが肥満になるのを防ぐため、マウスに1日1回、ヒトが1缶のソーダを毎日摂取するのに相当する、適度な量の果糖ぶどう糖液糖水を特別な注入器で口から与えました。2ヵ月後、 果糖ぶどう糖液糖水 を与えられたAPCモデルマウスは肥満にはならなかったが、普通の水で処理されたモデルマウスのものより大きくそしてよりグレードの高い腫瘍を発達させました。

ユン助教は、「これらの結果は、動物が腸内に初期段階の腫瘍を有する場合 ― これは偶然かつ予告なしに成人の多くのヒトに起こり得ることですが ― 適量の果糖ぶどう糖液糖水摂取するだけでも腫瘍の増殖および進行を促進します」、として「これらの発見を詳細に説明するためにはさらなる研究が必要です;しかしながら、動物モデルにおける我々の調査結果は、果糖ぶどう糖液糖水慢性的な消費はがんが発生するのにかかる時間を短縮することを示唆するものです。人間では、大腸がんは、初期の良性腫瘍から攻撃的ながんへと成長するまでに、通常20〜30年かかります」と言っています。

この研究論文の共著者、ユン助教の元指導者、ワイルコーネル医科大学のサンドラ・エドワードメイヤーがんセンターがん生物学のカントレー教授は「動物モデルにおけるこの観察は、過去30年間に甘い飲み物や他の高糖分の食品の摂取量が増加したのは、米国の25〜50歳の大腸がんの増加と相関する理由を説明するものかもしれない」と述べています。コーネル医科大学院、メイヤーがんセンターのディレクターであるルイスカントレー博士は、彼の新しい研究が「サイエンス」誌に掲載されていることについて説明しています

果糖ぶどう糖液糖ががんを増やすメカニズム

果糖ぶどう糖液糖が大腸がんを増やす分子メカニズム(Goncalves et al.の図より改変)|グルコースとフルクトースの混合物を含む果糖ブドウ糖液糖は、消費後に胃腸管を通って流れる。グルコースとフルクトースは腸の腫瘍に直接吸収され、果糖ブドウ糖液糖を毎日摂ると腫瘍の成長が促進されることを示す。この成長促進効果は、フルクトースからフルクトース1-リン酸(F1P)を産生する酵素、ケトヘキソキナーゼ(KHK)に依存し、アデノシン三リン酸(ATP)の枯渇をもたらす。これらの代謝変化は両方とも、腫瘍増殖に必要な構成要素になるグルコースの変換を促進する。


その後この研究チームは、この砂糖が腫瘍の成長を促進するメカニズムを調査しました。彼らは、控えめな量の 果糖ぶどう糖液糖 を与えたAPCモデルマウスが、結腸に大量のフルクトースを含んでいることを発見しました。「我々は、 果糖ぶどう糖液糖水 がそれぞれ結腸と血液中のフルクトースとグルコースのレベルを増加させ、そして腫瘍が異なる経路を介してフルクトースとグルコースの両方を効率的に取り込むことができることを観察しました。」

腫瘍組織中のグルコースとフルクトースの運命を追跡すべく、チームは最先端の技術を使用して、フルクトースが最初に化学的に変化し、このプロセスはその後、最終的に腫瘍を増殖させる脂肪酸の生産を効率的に促進しました。

ユン助教は、「これまでのほとんどの研究では、動物または細胞株における糖の影響を研究するためにグルコースまたはフルクトースの何れかのみを使用していました。私たちはこのアプローチについては、飲料や食品に含まれるのはグルコースまたはフルクトースのみであることから、人々が実際に行っている甘くした飲料の摂取方法を反映していないと考えました。彼らは、同量のグルコースとフルクトースを同時に摂取しています」として、「我々の発見から、腫瘍におけるフルクトースの役割は、脂肪酸合成を指示するグルコースの役割を強化することであることが示唆されています。」と語っています。

イメージ画像(出典:rawpixelによるPixabayからの画像)


研究者らは、フルクトース代謝または脂肪酸産生の増加が糖誘発性腫瘍増殖の原因であるか否かを判断すべく、APCモデルマウスを修正し、フルクトース代謝または脂肪酸合成に関与する酵素をコードする遺伝子が欠けるようにしました。APCモデルマウスの一群はフルクトース代謝に関与する酵素KHKを欠き、そして他の群は脂肪酸合成に関与する酵素FASNを欠いていました。それらは同程度の量の 果糖ぶどう糖液糖水 を与えた場合、これらの遺伝子のいずれかを欠くマウスは、APCモデルマウスとは異なり、それほど大きな腫瘍を発症しないことを発見しました。

カントレー教授は、「この研究から、甘いソーダやその他多くの加工食品のほとんどに主成分である 果糖ぶどう糖液糖 を、大腸がんが腫瘍増殖率を高めるための燃料として利用されているという驚くべき結果が明らかになりました。」として「多くの研究が大腸がんの発生率の増加と食事との間に相関関係があるが、この研究は糖の消費と大腸がんの間の相関関係についての直接的な分子メカニズムを示しています。」と述べています。

ユン助教は、「我々の調査結果はまた、治療の新たな可能性を開くものです」として、「グルコースとは異なり、フルクトースは正常細胞の生存と増殖に必須ではありませんが、このことはフルクトース代謝をターゲットとした治療法は探索する価値があることを示唆しています。あるいは薬に頼らずして、可能な限り 果糖ぶどう糖液糖 の摂取を避けることによって結腸への糖分の影響を減じることになるでしょう。」と述べています。

ヒトにおけるさらなる研究が必要でありますが、ユン助教とその研究グループは、この研究が果糖ぶどう糖液糖入りドリンクの消費することがヒトの健康に及ぼす潜在的に有害な影響に関する世間の認識を高め、世界中の大腸がんのリスクと死亡率を減らすのに役立つことを願っています。

引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:High-fructose corn syrup promotes intestinal tumors in miceBaylor College of Medicine3-21-2019

🔵 原著論文:High-fructose corn syrup enhances intestinal tumor growth in mice
Science (2019) Mar 22;363(6433):1345-1349.
Goncalves MD, Lu C,・・・ Cantley LC, Yun J.

Seigoの追記

高フルクトース・コーンシロップは日本では果糖ぶどう糖液糖と呼ばれ、日本でもほとんどありとあらゆる食品を甘くするために使われています。(ぶどう糖果糖液糖、異性化糖とも呼ばれる)

アメリカと日本の食品を見るとこの甘味料が入っていて、むしろ入っていない物を探すのは日本では特に大変です。

アメリカではオーガニック食品売り場に行けば、比較的簡単に高フルクトース・コーンシロップが入っていない食品が手に入ります。

まとめ(原著論文のデータも含む)

 これまでに分かっていたこと 
🔴 ヒトの疫学調査で高フルクトース・コーンシロップ(日本では果糖ぶどう糖液糖と呼ばれる)を大量に摂ると肥満と大腸がんのリスクが上昇することが分かっていたので、今回の研究はその分子メカニズムを動物実験で明らかにした。

 今回の研究で分かったこと 
🔴 大腸がんの増殖は、肥満やメタボリック・シンドロームと無関係で、果糖ぶどう糖液糖によって直接腫瘍は増殖し、腫瘍グレードも上がった。
🔴 果糖ぶどう糖液糖を毎日摂るとポリープからガンに変わる時間が短縮された。
🔴 果糖ぶどう糖液糖は大量に与えたわけではなく中程度である(ヒトにして1日355mL)
🔴 フルクトースやグルコースの濃度は大腸内だけではなく血液中にも上がった。
🔴 フルクトースは大腸がんの組織内にある酵素KHKによってF1Pに変化し、これによって腫瘍細胞の代謝が変化し、腫瘍の増殖を促す脂肪酸が生産された。
🔴 動物実験にはAPCモデルマウスが使われた(すでに腸にポリープがあるマウス)。
🔴 ヒトの大腸がんの増殖を促すかどうかの直接的な研究はまだなされていない。

この研究の前からヒトの疫学調査で果糖ぶどう糖液糖をとると大腸がんのリスクが上がるという結果が出ていたのですね。テレビやマスコミでぜんぜん伝えられていなかったので知らなかったです。虎ノ門ニュースでもやっていません。

とりあえず今年の3月に、ついに果糖ぶどう糖液糖で大腸がんが増殖する分子メカニズムまで解明されてしまいました。いつまで業界は黙っているのでしょうか?

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🔵 果糖ぶどう糖液糖の危険性: コカインと同様の中毒性があることが判明! (2019.05.01)
🔵 こわ〜い甘味料・砂糖の話: スクラロース,ブドウ糖果糖液糖,アスパルテーム(2019.05.01更新)


果糖ぶどう糖液糖や砂糖以外に安全な甘味料(ベスト9)

当サイトでは先日ヘルシーな甘味料ベスト9を記事にしました。

どうぞご覧下さい。

関連書籍:コーンシロップ→トウモロコシ→遺伝子組み換え食品(GMO)

コーンシロップはトウモロコシから作られ、そしてトウモロコシの90%以上は遺伝子組み換え食品(GMO)です。高フルクトース・コーンシロップ(果糖ぶどう糖液糖)を摂ることはGMOを摂ることになるかもしれないことを私たちは知っておいたほうが良さそうです。

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