新型コロナウイルスの治療薬として期待されるアビガンとは?/すでに臨床試験で使われていた!

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日本でも新型コロナウイルス感染で死者や重症患者が出てきてますが、日本に新型コロナウイルスの特効薬として期待されている薬が200万人分も備蓄されていることをご存知でしょうか?

海外の論文や日本の新聞記事を集めましたので、以下にまとめておきます。

アビガンとは?

・アビガンとは製品商品名であり、本当の名前はFavipiravir(ファビピラビル)というとても覚えられそうもない名がつけられています。(ここではアビガンと呼びます。)

・アビガンは富山化学の江川裕之氏らが合成し、古田要介氏らが抗インフルエンザ活性を見出しました。そして、富山大学医学部の白木公康氏らがインフルエンザ感染マウスでの有効性、タミフルより強い治療効果があることと薬剤耐性を生じないことを見出しました。

アビガンの構造

アビガン(Favipiravir)の構造(出典:PubChem & Wikimedia Commons, by Yikrazuul (トーク) – PMID 19428599, リンク


プリン(アデノシン・グアノシン)類似体の構造です。これがRNAポリメラーゼにくっつき、ウイルスRNAの合成を抑制します。

アビガン錠の効き方

・アビガンの作用機序はRNA合成酵素にプリン(アデノシン・グアノシン)類似体として、RNA鎖に取り込まれますが、取り込まれた部位でRNA合成を止めるChain terminator(伸長阻止薬)として、ウイルスRNAの合成を阻止します。(ウィキペディアより)
・本来は抗インフルエンザウイルス薬で、ウイルスの細胞内での遺伝子複製を防ぐことでウイルスを増やさないようにします。そのためインフルエンザウイルスの種類を問わず抗ウイルス作用が期待できます[2]。
またインフルエンザウイルスだけでなく、エボラ出血熱ウイルスやノロウイルスなどにも効くかどうかの試験・研究が行われており、ケンブリッジ大学のイアン・グッドフェロー教授の研究チームは2014年10月21日、マウスを使った実験でノロウイルスの減少・消失を確認したと発表しました[3][4][5]。さらにウエストナイル熱ウイルス、黄熱ウイルスなどのRNAウイルスにも効果があると考えられており、同研究チームは「治療だけでなく感染予防にも効果的である可能性がある」とコメントしています[6]。
参考文献

なぜアビガンが新型コロナウイルスの治療薬として期待される?

新型コロナウイルスはRNAウイルスなので、ほとんどのRNAウイルス(トリインフルエンザやエボラなど)を撃退する効果のある「アビガン」は当然その効果が期待されているのです。

このことをメディアではあまり取り上げません。

日本のニュースでもアビガンが期待されていることが小さく報道される

新型コロナウイルスに「今」効く薬は無いのか
RNAポリメラーゼ阻害薬「アビガン」の可能性
(2020.01.28 16:00)
三井勇唯
中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる感染症が猛威を振るっている。・・・問題は治療法が確立されていないことだ。海外では、中国・武漢市の調査チームが、新型コロナウイルスに感染した患者を対象にプロテアーゼ阻害薬の抗HIV薬であるロピナビルとリトナビルを併用する無作為化対照試験を開始したことを発表した他、複数の製薬企業が、抗HIV薬などを治療に使えないか検証し始めたとされている。
 国内の製薬企業はどうか。日本にも、世界と対等に戦える優れた医薬品があるはずだ。例えば、富士フイルム富山化学が製造販売承認を取得した抗インフルエンザウイルス薬の「アビガン」(ファビピラビル)はその1つだろう。アビガンは、ウイルスの増殖に必要なRNAポリメラーゼを阻害することで効果を示す。2015年には、フランス国立保健医学研究機構(INSERM)によって、アビガンが一部のエボラ出血熱患者(エボラウイルス)に効果を示すことが報告され、話題となった。
 ところで、このアビガンは新型コロナウイルスに効果があるのだろうか。富士フイルム富山化学の広報担当者は、「現段階では、コロナウイルスに対してアビガンが有効であるというデータは得られていない」と本誌(日経バイオテク)の取材に答えた。ただ、「今後、新型コロナウイルスに対して治療効果を検証したり、それに伴ってアビガンを提供したりするように要請を受けた場合は、前向きに協力したい」(広報担当者)との見解も示した。なお、アビガンに関しては、新型インフルエンザ向けではあるものの、厚生労働省が約200万人分の備蓄をしており、緊急時の流通体制が整備されている。
 仮に国内で新型コロナウイルスに有効な医薬品が判明したとしても、流行地域で実用化するためには、政府が主導して国際的な協力を呼び掛ける必要があるだろう。ただ、民間企業としてやれることは無いのか、今こそ考えるべきではないだろうか。
引用ニュース:日経バイオテクONLINE

 

アビガンの活性データと発表された論文(2020年)

アビガンはすでにタイの病院で試験され、活性テストが行われ論文発表されていました。

アビガンファビピラビル(T-705)〕、インフルエンザ治療のために承認されたグアニン類似体は、インフルエンザ、エボラ、黄熱病、チクングニア、ノロウイルスおよびエンテロウイルスなどのウイルス4のRNAのRNA依存性RNAポリメラーゼを効果的に阻害することができるまた最近の研究では、2019-nCoVに対して (EC 50  = Vero E6細胞で61.88μM)5 の活性があることが報告された。

引用文献(オープンアクセス;英文の論文の全文が無料で読めます):Therapeutic options for the 2019 novel coronavirus (2019-nCoV), Nature Reviews Drug Discovery, 2/10/2020

アビガンの臨床試験が実地される2つの中国の施設

この情報は日経バイオテクにより伝えられました。

引用ニュース:新型コロナに対する臨床試験を全調査、ゾフルーザやアビガンの成分活用(日経バイオテクONLINE)

アビガンが使われる中国の病院は以下の表の5段目に出てきます。

その下に病院の地図を載せておきます。
表1 中国で新型コロナウイルスの患者を対象に実施されている9本の臨床試験(日経バイオテク作成)
介入薬
(プラセボや標準治療は除く)
作用機序
例数
開発段階
資金提供者
登録番号
ウミフェノビル
抗ウイルス薬
500例
第4相
中国Xiangya Hospital of Central South University
NCT04246242
メチルプレドニゾロン
ステロイド
80例
第2/3相
中国Peking Union Medical College Hospital
NCT04244591
リン酸クロロキン
抗原虫薬
20例
第4相
中国Sun Yat sen Memorial Hospital of Sun Yat sen University
ChiCTR2000029542
バロキサビル マルボキシル/ファビピラビル/リトナビル・ロピナビル
抗ウイルス薬
30例
中国The First Affiliated Hospital
中国Zhejiang University School of Medicine
ChiCTR2000029548

アビガンが臨床試験される病院① 中国 The First Affiliated Hospital

GoogleMapより(画像をクリック/タップすると拡大できます)

アビガンが臨床試験される病院② 中国 Zhejiang University School of Medicine

GoogleMapより(画像をクリック/タップすると拡大できます)


 

アビガンが新型コロナウイルスを撃退してくれますように。

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