土壌の微生物を変えるだけで野菜は病気にかからなくなる!? (2019年最新論文)

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病気になりやすい野菜となりにくい野菜の土を比べると、健康な野菜の土壌は病原体を撃退する微生物が多いことが発見されました。また、その土壌を交換するだけで野菜が病気にかからなくなることも分かりました。

この研究はイギリスのヨーク大学が論文として発表し、大学のサイトからプレスリリース(英語)が公開されましたので、翻訳してご紹介します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません。

また発表された論文はオープンアクセスですので、どなたも無料で全文が閲覧できます。リンクを以下のレビュー記事の後に貼っておきます。
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土壌の微生物が植物病に対する抵抗性において重要な役割を果たすことを明らかに

科学者たちは、土壌微生物が植物を侵攻性の病気に対してより耐性にし、持続可能な食料生産の新たな可能性を開くことができることを発見しました。

ラルストニア・ソラナセラム菌(Ralstonia solanacearum)による青枯病(あおがれびょう;ナス科植物をはじめ、200種以上の植物に感染、枯死させる農業上深刻な被害をもたらす病害)はトマトやジャガイモなどいくつかの植物に感染しますが、これは世界中で、特に中国やインドネシア、そしてアフリカにおいて大きな経済的損失を引き起こします。

ラルストニア・ソラナセラム菌に感染した病気(左)と健康(右)なトマトの苗。写真の引用:ヨーク大学プレスリリース


中国とオランダの研究者らと協力しているヨーク大学の研究者は、植物と病原体の相互作用における土壌細菌叢(さいきんそう;フローラ)の影響を調査しました。感染は畑全体で「斑状」であることが多く、作物全体に影響を与えませんがこの原因は不明でした。

土壌微生物叢

生物学部のVille Friman博士は次のように述べています。

「病原体はトマト畑のいたるところに見つけられましたが、すべての植物に感染するわけではありません。この場所による違いが、土壌細菌叢によって説明できるかどうかを調べたかったのです」

病気の発症に対する土壌細菌叢の影響を研究するために、個々の植物から大きいダメージを与えずに何回もサンプリングできるように新しく開発された実験法を用いました。これにより病気の症状が見てわかるようになるずっと前に遡って、健康な植物と病気の植物の土壌細菌叢を比較することができました。

サンプリング法により、健康を維持している植物と感染した植物とで、土壌に存在する微生物を比較することができました。

分析により、生き残った(病気にかからなかった)植物の土壌細菌叢が ‘ある珍しい菌腫’ や ‘病原体をやっつけるシュードモナス菌とバチルス菌’ と関連していることが示されました。

作物生産

Friman博士は次のように付け加えています。

「耐病性の改善は、医学で使用される糞便移植に類似して、土壌移植によって次世代の植物に継承できることがわかりました。

私たちの結果は、病原体だけでなく根圏(こんけん;植物の根の分泌物と土壌微生物とによって影響されている土壌空間のこと)に存在する天然の有益な微生物にも焦点を当てることが重要であることを示しています。人間と植物にとっての微生物の有益な役割は長い間認められてきましたが、比較データに基づいて原因と結果、および重要な細菌分類群を解明することは困難でした」

チームは現在、作物生産のためのさまざまな細菌接種剤の開発とテストを行っています。この研究は、植物を病原体から保護するための「土壌プロバイオティクス*」として細菌を使用できる可能性を、将来的に開くものです。

※ プロバイオティクスとは、人体に良い影響を与える微生物、またはそれらを含む製品・食品のこと。(ウィキペディアより)

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:New research reveals soil microbes play a key role in plant disease resistance ( )25 September 2019

🔵 原著論文(オープンアクセス:全文が無料でご覧になれます): Initial soil microbiome composition and functioning predetermine future plant health.Science Advances, 2019 )
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Seigoの追記

ナスによくみられる青枯病(あおがれびょう)というものがあって、その原因が実は土壌細菌の種類と関係していることを示した画期的な研究です。

これが分かれば農薬を使わなくても、土壌の微生物だけしっかり養えば、元気の良い野菜ができるということですね。

また病気にならなかった野菜の土壌では、病原体をやっつけてくれるシュードモナス菌やバチルス菌が多く見つかったり抗菌化合物をコードする遺伝子が多く見つかったとのことです(原著論文より)。

論文では人のう○こ移植のように、土壌の微生物を交換することによって病気に耐性のある野菜を育てられるようになるとのことです。

無農薬野菜が誰でも簡単に作れるようになるかも?

無農薬野菜はこれまで農薬を使っていた土でいきなりやろうとしても難しいといわれています。実はそれは土壌細菌の種類が悪くて(もしくは農薬で良い菌が死滅しているために)上手くいかないのかも知れません。

今回の報告で示されているように、野菜が病気になったりするのは、すでに土壌細菌の種類によって決まっている可能性があるということなのです。そうなりますと、すでに無農薬野菜の栽培や自然農法に成功している方から土を分けてもらえば、素人でも簡単に無農薬野菜の栽培に成功できる可能性が出てきました。これは素晴らしい情報ですね!

自然農法をやっている方から教えてもらった良い土壌の作り方

10年以上前にネットで知り合った自然農法に成功している方から教えていただいたことは、土壌の炭素の量が非常に大切だということです。ある有機農法では土壌作りに堆肥(たいひ;家畜のフンなど)を使いますが、それだと窒素の量が増えすぎてあまり美味しい野菜が出来ず、また病気にも弱くなってしまうと。大切なポイントは、土壌は窒素を低く抑え、炭素の量が多くなるようにコントロールすれば美味しい野菜が無農薬、無肥料で作れるようになると言うことでした!〔自然は私たちのためにシンプルな方法で(農薬や肥料は使用せず)美味しい野菜ができる方法を作ってくれたとも言えるかも知れません。大事なことは土壌細菌の「調和」なのかもしれません〕

土壌中の炭素の量を増やすにはヒノキの木片とキノコを土壌に入れ、混ぜておくだけでよいということでした。そのようにして作った土で育った野菜は、虫に食われることなく(食われたとしても小さい穴だけ開けて虫はどこかへ去ってしまうそうです)、大きくて甘い野菜が出来ます。また面白いことに、その野菜の余りを捨てても、いつまでたってもその野菜は腐らないで残っているそうです。(抗酸化物質がたくさん入っていて、生命力が強いのかも)

また、EM菌を土にまくだけで病気に強く美味しい野菜ができるそうです。また、土壌細菌のことに気をつけて出来た野菜は、有機野菜よりも優秀で、ミネラルやビタミンなどの栄養豊富な野菜ができあがるそうです。

土壌細菌のことが分かってくれば、農薬を使わずに、また有機肥料や堆肥も使わずに、病気に強いおいしい野菜が出来るようになるのでしょうね。コストも下げられるかもしれません。土壌細菌の研究が日本でも盛んになるといいですね!

土壌細菌に関する書籍

『図解でよくわかる土壌微生物のきほん』
■■目次
第1章 土壌微生物とは何か?
第2章 土壌微生物の種類
第3章 自然界における土壌微生物の役割
第4章 有機物を必要とする土壌微生物
第5章 有機物を必要としない土壌微生物
第6章 根の周囲に生息する土壌微生物
第7章 根に寄生する土壌微生物
第8章 土の性質と土壌微生物
第9章 土を肥沃化する土壌動物
第10章 農耕地における土壌微生物
第11章 土壌微生物活用の最前線

『菌根菌の働きと使い方: パートナー細菌と共に減肥・病害虫抑制』
■■目次
第1章 共生微生物と菌根菌の世界
第2章 作物生産に菌根菌、特にAMFの力を借りて
第3章 菌根菌、特にAMFとパートナー細菌を活かす土壌管理法、病害虫防除法
第4章 菌根菌とそのパートナー細菌を活かす農法
第5章 菌根菌と遺伝子組み換え作物、そして菌根菌の純粋培養技術の重要性
第6章 菌根菌、特にAMFの核の分取とゲノム解析への挑戦

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