DIYバイオとは? 危険じゃないの? 自宅をラボにして研究するのがブーム! 肉の幹細胞を培養したり, 愛犬の遺伝病を治そうとする試み

ニュース/レビュー

今回は625日に放送されたクローズアップ現代「あなたも発明家に?身近になるバイオ技術」についてまとめました。

私も経験があるゲノム編集の話題も出てくるのでたいへん興味深いです。


自宅で DIY (Do it yourself) バイオ?

今 高度なバイオテクノロジーを使って自宅で手軽に発明に挑む動きが世界で広がっています。

愛犬の遺伝子を操作して病を治そうとする人も

愛犬家:「遺伝子を変えるコストが随分安くなったので、これまでできなかったこともできるようになったんです。」

遺伝子組み換えにゲノム編集・・・技術もオープンになり費用も格段に安くなったことから趣味として楽しむ人たちが増えているのです。

世界を変える発明が生まれるかもしれない。

ビシネスの面から早くも期待が集まっています。

投資会社社員:「非常に大きな産業になると思っているので、バイオにおけるアップルやマイクロソフトみたいな会社が今すでに生まれているのかもしれません。」


都内(文京区)にあるサークル

都内に一風変わった趣味のサークルがあります。

メンバーは生物好きの高校生や社員などおよそ40人。

挑んでいるのは、自宅で「肉の培養」・・・

自分たちで動物の細胞を培養し「人口の食用肉」を作ろうというのです。

ロンドンの番組(2013年)では:
シャーレで培養した肉をハンバーグ風にして試食していました。
そのお味は「本物の肉みたい」という感想でした。(科学ジャーナリストの感想)
牛の筋肉からとった幹細胞を再生医療の技術を使って増やします。
生き物を殺すことなく食肉を作り出す画期的な技術です。

これを自宅で実践しようというのが都内のサークルの目的。

メンバーの一人、Sさん(外資系コンサルタント会社勤務)は

リビングに実験スペースを設け、鶏肉の細胞を培養。

毎日成長を見守るのが何よりの楽しみ。

培養に使う器具はネットで買い集めたり、自作したり・・・

細胞を取り出す遠心分離機は扇風機の羽にチューブをテープで取り付けて。

SFの世界を実現するような気分を味わえるのが魅力

「単純に未来のあることをやってみたいとか、未来を実現するためにそういう活動してみたいなって」


牛肉遺伝子の入った「ステーキ味のトマト」を自宅で作ってしまったニューヨークの男性


今バイオテクノロジーを趣味として楽しむ人が増えており「DIY (do it yourself) バイオ」と呼ばれています。
DIYバイオが世界で最も進んでいるのがアメリカです。
NYで会社経営をするこの男性(セバスチャン・コチョバ氏)も5年ほど前から魅力にとりつかれたと言います。
「小さいけど機能的な研究室へようこそ♪」
ここでこの世に存在しない植物を次々と生み出してきたと言います。
「牛肉に最も多いタンパク質のミオグロビン(筋肉のタンパク質)をトマトに入れました。」
部屋から持ち出さない限り、個人が遺伝子操作をしてもアメリカでは違法ではありません。
この技術をインターネットで学んだそうです。
「生き物の遺伝子を書き換えられる偉大な力を与えられた気分です。完全にハマりました。もっといろんなことを知りたいし、新しい技術にも挑戦したいです。」

DIYバイオが急速に広まった理由は、2000年代に入り生物学がより手軽になったことです。
テクノロジーが進歩して早く安くできるようになった遺伝情報の解読。
例えば人の遺伝情報の解読にかかるコストはこの17年で105億円から12万円と8万分の1に下がりました。
2017年では12.3万円、アメリカ国立衛生研究所 調べ)
遺伝子を扱う人が増え器具の価格も下がりました。
遺伝子改変(CRISPR)キットも159ドル(約17,500円)で誰でも買えます。
ここで売っています  ↓

DIY Bacterial Gene Engineering CRISPR Kit, $159
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遺伝子操作を自分に試みた博士

そして去年ついにこんな人まで現れました。

「私たちは死ぬまで同じ遺伝子である必要はないです。」と

筋肉の成長を促す遺伝子を自分に注入。

その様子をインターネットで公開。

カリフォルニア州に住むジョサイア・ザイナーさん(37

生物化学の博士号を持ち、遺伝子改変の実験器具を製造販売しています。

自分の体を使った遺伝子実験は特に法律で規制されてません。

半年以上経って目立った効果や副作用は確認できないということです。

実験した理由は

「私だってバカじゃない。本当に筋肉をつけたければジムに通えばいいのはわかってる。人の遺伝子が如何に簡単に操作できるか世の中に伝えたかった。」

以前からザイナーさんは治療法のない(遺伝性の)難病に苦しむ人が多いのに胸を痛めてきました。



遺伝子操作が可能となったDNA

遺伝病の人への希望の光

筋ジストロフィーの患者さんは医者にサジを投げられました。

「彼女は遺伝子を変えて健康な筋肉を取り戻せないかと考えている。」

こういう患者さんの中には遺伝子治療に希望を託す人も少なくありません。

患者が自分の体を使って治療法を探すこともできるとザイナーさんは知らせたかったと言います。


加熱するDIYバイオ

アメリカの医学界は人体の遺伝子改変など行きすぎた実験には懸念しています。

アメリカ遺伝子細胞治療学会ヘレン・ヘスロプ会長

「専門的な裏付けのないまま個人が闇雲に実験を行うことはリスクを伴います。予想できない副作用を起こす可能性があるからです。」


(DIYバイオの詳しい)岩崎英雄 先生(早稲田大学 教授)

DIYバイオが広まったいくつかの理由

  • 遺伝子の解読技術が非常に発達し安く大量のデータが取れるようになった
  • それを改変しようとするときに必要なDNAを合成する技術が安くなったということ
  • インターネットによって大学にいなくても自分で学習できる環境ができた
  • それをシェアしたり、作ったものを仲間で共有することができたりすること

人体実験をやっている人は大丈夫ですか?

岩崎先生:かなりグレーゾーンで本当にリスキーなこともあるのであまりまねしないほうがいいと思いますし、安易に人に勧めるべきではないと思います。

一方で彼らが目指すビジョンはバイオテクノロジー技術をどのように捉え直して、どういう未来を創っていくかという表明として、いろんなものが作られたり、一種のデモンストレーションとして出てきているという側面はあると思います。


DIYバイオの代表的なもの

遺伝子改変
🔵 ステーキ味のトマト
🔵 光るビールや植物(クラゲやホタルの遺伝子で)
🔵 ペットの遺伝子治療

細胞培養
🔵 培養肉
🔵 バクテリアの薄いシート(石油にかわる環境に優しい新素材)

岩崎先生:企業だとプロダクトとして売れるものを作らないといけないし、大学だと論文を書けなければいけないとかいろんな制約があるので、そこを打ち破って自由な発想で何か新しいものが生まれたり、自分にとって有益なものを作るという回路が開かれるというのがあると思います。新しい命との関わりの延長線ということもあると思います。


DIYバイオを気軽に体験できる場所ができ始めています

東京渋谷のビルの一角に基本的なバイオ実験に必要な設備が揃う実験室があります。

ここでは毎週初心者向けの講習会や植物細胞の培養する実験などが行われています。

バイオクラブ・マネージャー:石塚千晃さん

「バイオはとても楽しいものだということを発見できるような場所になったらいいかなと思います。」


米国のDIYバイオの団体はすでに50以上ある

アメリカではDIYバイオを楽しむ団体がすでに50以上あります。

人々が資金を出しあい共同で実験室を運営しています。

カリフォルニアにある施設では月100ドルの会費で誰でも自由に本格的な機器を使うことができます。

15歳の学校帰りの少年:
「人工血液を作っています。ユーチューブの動画を見てもっといい方法があるかもしれないと始めたんです。」


DIYバイオを推奨:デレク・ジャコビーさん

「これは革命です。もっと多くの人に参加してもらわなくては。」

共同実験室の普及を後押ししてきたのは科学を解放し、政府や企業にはできない新しい変革を起こそうというオープンサイエンスの動きでした。

「情報をオープンにして誰もが利用できるようにすることが重要です。世の中の問題を解決する生物学をみんなで作るんです。」

オープンサイエンスが実を結び始めているケースが。

病の治療に欠かせない薬を市民の手で製造しようというものです。


インスリンを自分で安く製造する

インスリンの製造技術は大企業が独占し、価格が下がらない

IT関係の仕事をするアンソニー・ディ・フランコさんは13年前から糖尿病を患っています。

毎日打つインスリンの費用に悩まされてきました。  

「月500600ドル払っています。アメリカでは保険に入っているか金持ちでないとインスリンを買うことができません。買えずに亡くなる人までいるんです。

インスリンは微生物を利用して作られます。人のインスリンの遺伝子を微生物に組み込み、その微生物を増殖させて精製します。インスリンの製造技術は大企業が独占し、価格が下がらない要因になっています。

自分たちで安く製造する方法を探し、世界に公開したいと考えたディ・フランコさん。

3年前ネットで呼びかけたら寄付や協力の申し出が相次ぎました。技術者や元大学院生など様々な経歴の人が知識や人脈を生かしながら研究に当たっています。数年以内には各国の安全基準をクリアして技術を公開したいと考えています。

DIYバイオの研究室、団体の数(合計 168)
北米:62
ヨーロッパ:55
アジア:22
中南米:16
オセアニア:9
アフリカ:4
(アメリカの研究機関の調査による)

こうした動きの中から社会に貢献するイノベーションやプロジェクトが次々生まれています。

実際に食品偽装を暴いたという例もあります。


DIYラボの危険性

オープン・サイエンスの懸念
🔴 生態系への影響
🔴 安全性
🔴 生物兵器

岩崎先生:実際に先進国でこういうことをやろうと思うときは、遺伝子組み換え技術や生殖細胞をどう扱うかとか、あるいは病原菌を扱うことに関して規制があります。そのルールを守ることが大事だし、ルールがどうやってできたかの経緯を学ぶことも非常に重要です。

岩崎先生:リスクには①安全性、②倫理、③文化、④情報があり、大事なのは情報だと思っております。

いろんな情報が出てくるということはフェイクとか信憑性のない情報がどんどん出てくる可能性があります。

そこにどう対応するかが非常に重要になります。


オープンであるけれどもリスクを減らしていくことをどう両立させればよいか?

岩崎先生:オープンサイエンスで培ったシェアする文化をむしろ積極的に利用して、リスクについてもオープンに議論するということがとても重要です。そうしていけば、いろんな人が参加して情報の真偽であったり、研究成果が本当に有益なものかを多くの人でチェックすることができる可能性があります。そこに未来を託したいなと思います。


Seigoの追記

番組では遺伝子改変が簡単にできそうなふうに伝えておりますが、そんなことはありません。
CRISPR(クリスパー)というゲノム編集の主な作用は「DNAの切断」で、遺伝子をぶっ壊すのが得意なツールです。
CRISPRを間違って使えばゲノムは複数切断され遺伝子変異が起きて、ひどい場合 細胞は死んでしまいます。
ただCRISPRはねらった場所でゲノムを切断してくれるので、そこへ遺伝子を挿入する確率が増すのです。
(NYの方は牛肉の遺伝子や青色の遺伝子を組み込んでいましたね)
遺伝子の「改変」とか「交換」はその次の技術で、まだまだぜんぜん完成していない段階です。

今CRISPRができることはDNAをねらった場所で切断し、外から新たな遺伝子を導入すること」です。しかしこれがうまくいく細胞はわずかなので、その細胞を選別してする技術も持ち合わせていないとうまくいきません。

・・・と色々難しい点が多いからこそ、あれこれ試行錯誤してできた時の達成感は最高ですね。


培養で肉を作ることはうまくいくか?

培養液は会社から買うと高いので、スーパーで売っているお肉と比べて100倍以上高いお肉になってのかもしれません。
それでも動物を殺さないでお肉が食べられるなら、たぶんセレブが買ってくれるでしょう。
なので将来ビジネスになると思いますが・・・
自前で安い培養液があればいいですね。

とりあえず今までの企業や大学だけの閉ざされたバイオテクノロジーでなく、自由な発想で皆さんが自由に研究できるといいですね!

なんかスティーブジョブスがパソコンを作る前の「コンピュータ技術が爆発してスマホやインターネットがみんなの手元に来たように」、今は技術革新の前夜のような雰囲気が「DIYバイオ」にはあるような気がします(^^)

あ~、興奮してきまし

私もインターネットでお金を作って、バイオ技術の革新の波に乗りたいな~~~!

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