新しいゲノム編集ツールCasX: ヒトとは無縁の種から発見! 低免疫原性に期待
ニュース/レビュー
今回は新しいゲノム編集ツール「CasX」の報告です。
カリフォルニア大カリフォルニア大バークレー校のプレスリリースを翻訳しましたのでご紹介します。
ニュースタイトル「新しく小さなCRISPR:CasX」
わずか7年の間に、Cas9は自身が別格の遺伝子編集者であることを証明してきました。適用範囲はヒトや植物、動物、バクテリアに及び、DNAを迅速かつ正確に切り貼りできることで生物学を変革し、病気を治療するための新たな道を切り開いてきました。ところが、新たに登場したCasXは早くもCas9の手強い競争相手となりそうな様相を見せています。
2年前、UC Berkeleyの科学者Jill Banfield氏とJennifer Doudna氏が世界最小のバクテリアから発見したこのタンパク質はCas9に似ていましたが、かなり小さいものでした。遺伝子編集の要素として細胞に導入することを考えるとこれは大きな利点です。
しかし、それはバクテリアの外で働くでしょうか?
Natureに発表された研究によると、CasXは実際バクテリアとヒト細胞の両方において強力で効率的な遺伝子編集を行います。構造はCas9と研究が進んでいる近縁のCas12に似ていますが、バクテリア内で他のCasタンパクでは独自に進化してきたことが明らかなほど十分異なります。Cas9のように二本鎖DNAを切断し遺伝子を調節するためにDNAに結合することができ、他のCasタンパク質と同様、特定のDNA配列を標的とすることができます。
その上、Banfield氏は地下水と堆積物中に見られる微生物のデータベースから探し出してきており、ヒトの体内に見られないバクテリアのため、Cas9よりもヒトの免疫システムに受け入れられやすい利点があります。従来のCas9はCRISPERシステムによる治療法において、免疫反応を引き起こす事が懸念されています。
UCバークレーの元大学院生で、現在Innovative Genomics Institute(IGI)の研究員である、共著者のBenjamin Oakes氏は、
「ゲノム編集ツールにおいて免疫原性、導入性、選択性(特異性)は、非常に重要なポイントです。これら全ての点においてCasX(は優れていること)に興奮しています」
と述べています。
共著者のJun-Jie Liu氏とNatalia Orlova氏は低温電子顕微鏡を使い、遺伝子を編集する動きを示すCasXのスナップ写真を撮影しました。タンパク質のユニークな分子構造と形状に基づいて、研究者らはCasXはCas9とは無関係に進化し共通の祖先を共有しないと結論づけました。
Oakes氏は次のように述べています。
「最初に目を引いたのは、大変ユニークな構造であるのにこれまで知られていたRNA誘導型DNA結合タンパク質と同じような方式を実現させていたことです。CasXの無駄のない最小限の大きさは、自然の中に見られる方式の基礎となるものを明確にするものです。方式の基礎を理解することは目的に合致し、天然のものよりも優れたゲノム編集技術の開発の助けとなるでしょう」
こうした方向に、既にOakes氏らは取り組んでいます。
IGIのエグゼクティブディレクター、分子生物学、細胞生物学及び化学のUC Berkeley教授、およびHoward Hughes Medical Institute Investigatorを務めるJennifer Doudna氏は次のように述べています。
「この研究にみられる生化学、ゲノム編集および構造実験の集大成はIGIで進行中の包括的な取り組みの代表的な例です。私たちは次の「分子ハサミ」を発見することだけを考えているのではありません。次の「スイスアーミーナイフ」を作りたい、と考えているのです」
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Scientists find new and smaller CRISPR gene editor: CasX( University of California – Berkeley )2019.2.4🔵 原著論文: CasX enzymes comprise a distinct family of RNA-guided genome editors (Nature vol. 566, p218–223 (2019))
Seigoの追記
スイスアーミーナイフは小さくてハサミやナイフやドライバーなどいろいろついているものですね。CasXはヒトとは縁の遠いバクテリアから発見されたそうなので、免疫拒絶反応が起こらないのではないかと期待されています。
そうれが本当ならさらに安全なゲノム編集ツールになりますね!
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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