パーキンソン病の原因はある種の腸内細菌が影響していた!? (Nature誌2019年7月)

ニュース/レビュー

ある種の腸内細菌が原因でマウスでパーキンソン病が発症したという報告が Nature 誌に発表されましたのでご紹介いたします。

この研究はカナダのモントリオール大学が発表した詳しいレビューが大学のサイトにプレスリリース(英文)されましたので、その翻訳を以下に示します。(翻訳のプロではないので読みづらかったらすみません m(_ _)m )

の感染はパーキンソン病の引き金になりますか?

研究結果は、パーキンソン病のあるタイプは、病状がでる数年前から始まっている自己免疫疾患であることを示唆しています

本日発行の Nature 誌で、ヒトの疾患(パーキンソン病)に関わる1つの遺伝子を欠損したモデルマウスにおいて、(パーキンソン病の症状は当初出現しなかったが)腸の感染によってとパーキンソン病に近い病態が出現することが、モントリオールの研究グループから報告されました。

この発見は、同研究グループが最近示していた、PDが主要免疫構成要素と関係があるという研究結果を拡張したものになります。

この研究は、モントリオール大学のMichel DesjardinsとLouis-Eric Trudeau、モントリオール神経研究所のHeidi McBride、McGill大学のSamantha Gruenheid博士が率いる、共同研究チームによるものでした。

世界のPD患者数は、1990年から2016年の間に、250万人から610万人に倍増しました。比較的楽観的な予測として、今後30年間同じ割合で患者数が増加すると仮定すると、2050年までに世界中で1,200万人を超える計算になります。

PDの約10%の症例が、ミトコンドリア(エネルギーを生み出す細胞内の細胞小器官)に関連している PINK1 Parkin などのタンパク質をコードする遺伝子の突然変異によるものです。これらの突然変異を持つ患者は、早い年齢でPDを発症しますが、同じ変異を持つマウスモデルは病気の症状を引き起こさないため、マウスはPDの研究には適していない可能性があると考えられてきました。

イメージ画像(出典:Free-PhotosによるPixabayからの画像)


PD研究のスペシャリストであるTrudeauとMcBrideは、この新しい研究の結果は、この差を説明するかもしれないと主張しています。これらの動物は通常無菌施設で飼育されており、感染性微生物に絶えずさらされ​​ている人間の状況を反映させているとは言えないからです。微生物学者のGruenheidは、感染とPDとの関連性が、疾患の発症に関連する免疫反応のさらなる研究を促進させ、新しい治療法の開発・試験を発展させると確信しています。

PDは、ドーパミン作動性ニューロンと呼ばれる一部の脳神経の進行性の死によって引き起こされます。このニューロンの喪失は、振えや硬直を含むPD患者に典型的な運動症状の原因になります。ドーパミン作動性ニューロンの死を引き起こす原因は明らかになっていません。

神経科学者であるTrudeau氏は、次のように述べています。

「PDの現在のモデルのほとんどは、神経細胞内に蓄積している有毒な元素が原因で神経細胞が死滅するという考えに基づいています。しかし、このモデルでは、運動機能障害の出現およびニューロンの顕著な喪失の数年前からPDの病理学的特徴が出現していることを説明することができません」

この理由は本研究の結果によって説明されると考えられます。モントリオールのチームは、PDに関連する遺伝子を欠いているマウスでは、若いマウスで軽度の腸の症状を引き起こす細菌による感染が、後年のこれらの動物でPDのような症状を引き起こすのに十分であることを示しました。

パーキンソン病様の症状は、パーキンソン病患者の治療に使用される薬であるL-DOPAの投与によって一時的に回復する可能性があります。 モントリオール大学病院研究センター(CRCHUM)の免疫学者、DesjardinsとDiana Matheoud は、正常マウスでは免疫系が腸感染に適切に反応するのに対し、パーキンソン病に関連する遺伝子 PINK1 を欠くマウスでは、免疫系が過剰に反応し、健康な細胞を攻撃するように導く「自己免疫反応」を引き起こしたと指摘しています。今日発表された結果は、ドーパミン作動性ニューロンの死滅は毒素の蓄積によってではなく免疫細胞が関係していることを示唆しています。

感染した変異マウスにおいて、自己反応性の有毒なTリンパ球が脳に存在し、培養環境下で健康なニューロンを攻撃し得ることが示されました。

著者でもある、微生物学の大学院生、MatheoudとTyler Cannonは、PD患者の一部では、何らかの運動症状に気付く数年前に、腸内に自己免疫疾患を発症していると考えられ、すなわち予防治療を行うための数年の猶予が存在するという事実を強調しています。

ーーー 翻訳ここまで ーーー


引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Can gut infection trigger Parkinson’s disease?)07/17/2019

🔵 原著論文 : Intestinal infection triggers Parkinson’s disease-like symptoms in Pink1−/− mice (N&V) (Nature , 2019 )

Seigoの追記

たいへん興味深い報告なのでポイントを以下に整理しました。

🔵 パーキンソン病の1つの原因遺伝子である Pink1 という遺伝子が欠損したモデルマウスを使用しています。

🔵 これまで Pink1欠損マウスはパーキンソン病の症状が出なくて研究者は困っていました。

🔵 ただそのマウスは無菌状態で飼われているため、ヒトに近い細菌の存在する状態を再現していくうちにパーキンソン病の症状が出ることが分かりました。その菌の種類はグラム陰性菌でした。

🔵 腸管が感染した Pink1欠損マウスはミトコンドリアの抗原を見せつけて、免疫系(細胞傷害性ミトコンドリア特異的CD8+ T細胞)を活性化してしまうため自己免疫疾患が誘起されました。

ヒトではパーキンソン病の症状の出る数年前から病理学的特徴が出現していることがあるので、早めに自己免疫疾患の治療に取りかかればパーキンソン病の症状が出る前に病気を食い止められるかも知れないと研究者は期待しているそうです。

腸内細菌を整えることが認知症の予防になる可能性がまた示されましたね!
腸内細菌を健康に保ち認知症とは無縁でいきましょう 😄

関連書籍

以下の書籍の35ページにパーキンソン病やアルツハイマー病も腸から起こっていると書かれています。

 

 

 

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