活性化している遺伝子(RNA)を分析して実年齢を推測できる! 米国ソーク研究所が考案

ニュース/レビュー

グノシーの2018/12/26の記事より抜粋



人の体は年齢を重ねるごとに老化していきますが、必ずしも60歳の人よりも80歳の人の方が身体的に老化しているとは限らず、60歳の人が加齢に伴う病気を患っているかもしれない一方で、80歳でも元気で健康に生きている場合もあります。

そんな実年齢と身体年齢の違いについて、アメリカのソーク研究所の研究チームが「働いている遺伝子(RNAの発現)を調べることで身体年齢を予測する機械学習アルゴリズム」を開発しました。

平均して±4年以内の誤差で実年齢を予測できるそうです!

 

プロジェクトの目的


特定の範囲に焦点を当てずに老化の遺伝子的兆候を発見する」というプロジェクトで始まりました。

サンプルの採取の仕方

🔵 健康な1~94歳の人々合計133人を対象

🔵 真皮の成分を作り出す線維芽細胞を採取

 線維芽細胞を選んだ理由 
・単純で非侵襲的な方法で採取できること
・数週間から数ヵ月で入れ替わる他の細胞と違い、一生にわたって体内にとどまり続ける細胞であることから、老化の兆候を含む可能性が高いと考えられていた


分析法と結果

採取された線維芽細胞は研究室内で培養され、RNA-Seqという細胞中のRNA配列を解読して遺伝子の発現などを調べる方法で分析されました。

その後、RNA-Seqデータを分類するためのカスタム機械学習アルゴリズムを使用することで、研究チームは平均して±4年以内の誤差で細胞を採取した人物の年齢を予測できるようになったとのこと。

今回使用した分析法が信頼できるかの検証


アルゴリズムが正しく動作していることを証明するために、研究チームは先天的遺伝子異常を原因とする早老症の一つ、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者10人からも線維芽細胞を採取し、アルゴリズムで判定を行いました。

その結果、早老症の患者は実年齢よりもおよそ10年ほど高齢であるという予測結果が出たそうです。

Seigoの追記

RNAの発現(mRNAやmiRNA)をみて実年齢の推測をしてしまうとは奇抜なアイディアで素晴らしいです。

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者を検証のために分析した結果、10年ほど高齢であったということですが、これはもっと40〜50年差を期待していたのではないかと思います。

なぜならその症候群を持っている方は10代でもすでにおじいちゃんやおばあちゃんのような様相になっておりますので、その年齢差は40〜50年早く歳をとってしまったと表面的には見えるからです。

それにしてもこの研究のスタートは「特定の範囲に焦点を当てずに」という姿勢が柔軟性があってとても良い考え方だなと思いました 😀

参考文献

 引用した学術論文  《 英文、オープンアクセス(全文が無料で読めます) 》
Predicting age from the transcriptome of human dermal fibroblasts
Genome Biol. 2018 Dec 20;19(1):221. doi: 10.1186/s13059-018-1599-6.
Fleischer JG1, Schulte R2, Tsai HH2, Tyagi S2, Ibarra A3, Shokhirev MN4, Huang L4, Hetzer MW5, Navlakha S6.

ソーク研究所の広報:Age is more than just a number: machine learning may be able to predict if you’re in for a healthy old age (December 20, 2018)

英語レビュー:Salk scientists find genetic signatures of biological aging (sandiegouniontribune.com)

日本語レビュー:遺伝子を調べて実年齢よりも身体年齢が高いか低いかをチェックできると判明(グノシー)by Tristan Le
〔Seigoの補足:タイトルには「遺伝子」とありますが、実際には「RNA」を調べている論文なのでご注意下さい。〕

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。