ゲノム編集による初の人体実験/Sangamo製ZFNsを使用【2019年最新論文】

ニュース/レビュー

今回は遺伝病を治療するために試験された最初のゲノム編集ツール(ZFNs)で初の直接体にゲノム編集の報告です。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校とAP通信がその結果を伝えております(英文)ので、翻訳してご紹介します。

ニュースタイトル「テストは科学者が第1回「体内」遺伝子編集を達成したことを示唆する」

FILE – 2017年11月13日月曜日、Brian Madeuxが、カリフォルニア州オークランドのUCSF Benioff小児病院で彼のガールフレンドMarcie Humphrey氏が拍手を送り、最初のヒト遺伝子編集療法を受け始まりました。  2019年2月7日木曜日、科学者たちは、代謝疾患を持つMadeuxを含む約10人の成人の遺伝子を編集または永久にDNAを変更する最初の取り組みについて最新情報を発表しました。 (APニュースの見出しの写真の脚注より)


すぐに治療法として用いるには至らないものの、病気治療を目的とした試みとして、今回初めて成人体内での遺伝子編集によるDNAの改変に成功しました。

まれな疾患を持つ2人の男性の予備的な結果として、非常に低いレベルで正しく編集された遺伝子を有するようになったことがわかりました。ただ病気の治療としては十分な量とは言えないかもしれません。

それでも、この結果は欠陥のある遺伝子によって引き起こされる多くの病気をいつの日にかDNAを投与することで治療できるようになるための科学的なマイルストーンです。

「これは最初の一歩に過ぎず、効能としては不十分です」
とノースカロライナ大学チャペルヒル校のJoseph Muenzer医師は述べています。

彼は木曜日にフロリダ州オーランドでの会議で結果を発表し、そして治療法の開発元である、カリフォルニアに拠点を置くSangamo Therapeuticsと協議しました。研究者たちはより強力な治療法の開発に取り組んでいます。

遺伝子編集は変異型の遺伝子を働かなくする、または欠損している正常型の遺伝子を供給することによる、より正確な遺伝子治療法と位置付けられています。疾患の治療目的で成人の遺伝子を改変することは、次世代へ遺伝することがないため批判を受けることはありません。最近、中国の研究者が行い非難された胚の時期に、双子の女の子に施された遺伝子編集とは事情が異なります。


Sangamo社のゲノム編集ツール(ZFNs)を人を使った最初の臨床試験

イメージ画像(出典:sungmin choによるPixabayからの画像)


 

Sangamo社の研究には、特定の糖化合物の分解酵素遺伝子の欠如によって引き起こされるハンター症候群およびハーラー症候群の男性が含まれています。遺伝子の欠如によって蓄積した糖が臓器を損傷するため、患者は20歳までに亡くなることが多い疾患です。

2017年に、アリゾナのBrian Madeuxが最初の被験者となりました。多数コピーの正常型遺伝子が、細胞のDNAに組込むツールであるジンクフィンガーヌクレアーゼZFNs)と共に、静脈内投与されました。

結果

イメージ画像(出典:ParentingupstreamによるPixabayからの画像)


彼と他の7人のハンター症候群患者さらに3人のハーラー症候群患者の結果から、治療は安全であることが示唆されましたが、それがこれらの初期の実験の主な目的でした。気管支炎、不整脈、ヘルニアが副作用として疑われましたが、治療ではなくその疾患に起因するものと考えられました。

組織サンプルの解析の結果、中用量を投与された2人のハンター症候群患者において、非常に低いレベルで遺伝子編集の証拠が見出され、低用量を投与された1人の患者では認められませんでした。今年後半に、高用量を投与されたハンター症候群患者およびハーラー症候群患者のサンプルの解析が行われる予定です。

血液検査で何人かのハンター症候群患者で、治療目的である酵素が多少高いレベルで検出されましたが、どの患者でも健常者のレベルには達していませんでした。1人の患者ではより多くのの酵素量が見られました。同時に免疫系による攻撃が起きる可能性が示されましたが、治療により沈静化されました。

ハーラー症候群患者の結果はより良いものでした。3人の被験者すべてで、特定の血球の検査では、酵素量が正常値にまで上昇していたのです。

これらの結果を発表したオークランドのUCSF Benioff小児病院のPaul Harmatz医師は、ハーラー症候群患者にとって「非常に望みを持たせる結果です」と話しています。

しかしながらいずれの疾患を有する患者でも、問題となる糖化合物の尿中濃度の持続的な低下は見られず、他の検査結果でも期待されていた効果は検出されませんでした。

患者自身の体で十分量の酵素が作れるようになったかどうかの検査の結果によって、患者は酵素による毎週の治療を続けるかの判断がなされます。これまでに3人が治療を中止していますが、1人は倦怠感、および糖化合物のレベルの上昇のために、近々治療の再開を勧められました。他の患者は、次回どれだけ続ける必要があるか、しばらく続けてから判断することになります。

ペンシルベニア大学のKiran Musunuru医師は、「安全のようですから、これはいい兆候です」と述べています。

彼は初期の結果が有望であると言っていますが同時にもう少し調査をしなければ、効果があるかどうかは明確ではないとも述べています。

「彼らが遺伝子編集でやろうとしていることは非常に挑戦的です。遺伝子を働かなくするよりも、編集によって改良したり遺伝子を組込む方が難しいですから」

ヴァンダービルト大学のTyler Reimschisel医師も同様の意見を述べています。

「落胆することはありません。取り組みは始まったばかりで、試験数も少ないですから。これは間違いなく斬新で革新的な治療法です」

しかし、疾患が治るかどうかは定かではありません。

Sangamo社の社長、Sandy Macrae医師は、より強力なバージョンを開発中であると述べています。治療は安全と思われるため、規制当局は最近、ハンター症候群の10代の若者が研究に参加できるようにすることを許可しました。 最終的な目標は、病気が悪化する前の幼い子供のうちに、治療を行うことです。彼は、開発をどのような方向に進めていくかを決定する前に、現在の患者に関するさらなる結果を待つと述べ、「遺伝子編集を達成できたことは、今後の基盤となる重要な結果です」と話しています。

引用ニュース

🔵 AP通信ニュース:Tests suggest scientists achieved 1st ‘in body’ gene editingAPnews )February 8, 2019

🔵 その他の参考データ(ノースキャロライナ大学ニュース):PRELIMINARY DATA FROM GROUNDBREAKING GENOME EDITING CLINICAL TRIAL ENCOURAGING 
(The North Carolina Translational and Clinical Sciences (NC TraCS) Institute at The University of North Carolina at Chapel Hill )

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Seigoの追記

ゲノム編集といえばCRISPR(クリスパー)が有名ですが、今回のニュースでは一番最初に発見されたゲノム編集ツールのジンクフィンガーヌクレアーゼZFNs)を使っています。

これはラボで自作するのは一番難しいタイプのゲノム編集ツールですが、正確さは高くオフターゲット(off-target)は少ないという面では「動けば安全にゲノムを編集できる」と言われている優秀なツールです。

私は3種類全てのゲノム編集ツール(ZFNs, TALENs, CRISPR/Cas9)を使ったことがあります 😄
3つのツールを比べましたところ(同じ遺伝子部位を使用)、ZFNsが一番効率が良かったです。

私としては人の体の中で試験するよりも、ex vivo(体外)で血液細胞のような細胞を体の外に取り出してから遺伝子を導入して、治療効果と安全性(発がんがないことなど)が確認できたものを体に戻すというやり方のほうが良いように思えます。しかしこの場合移植後の細胞の生着率や生存率が悪いのでうまくいってないようです。しかし中内先生のグループが最近発見した造血幹細胞を糊の成分で増やす方法がうまくいけば、体外でゲノム編集して、うまくいった細胞だけを移植するという方法がうまく行き始める可能性があります!

上記にはゲノム編集を使ってどのように治療したかが書いてなかったのですが、以前のニュースを調べましたところその情報がゲットできました。
🔵 アルブミンと呼ばれるタンパク質のプロモーター付近(遺伝子発現をコントロールしている部域)の特定の位置で(治療用の)遺伝子の代替コピーを挿入しているそうです。遺伝子の発現は強力なアルブミンプロモーターによって制御され、治療用の遺伝子による酵素が発現し、治療につながるというものでした。(Scienceニュース(英文), 2017/11/15

また、ZFNsの細胞への導入方法はSangamo社のホームページに記述があり「アデノ随伴ウイルス(AAV)」を使用しているそうです。

ゲノム編集方法(まとめ)

ゲノム編集方法
・ ゲノム編集ツール:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFNs)
・ ターゲット遺伝子:アルブミン遺伝子プロモータ領域
・ 遺伝子導入方法:アデノ随伴ウイルス(AAV)
・ 治療方法:アルブミン遺伝子のプロモータ領域にハンターおよびハーラー症候群治療用遺伝子を導入し、アルブミンのプロモータ制御下で発現を試みる。(アルブミンプロモーターは主に肝臓でONとなる)
・ 免疫反応:免疫反応は生じたが治療により沈静化


ゲノム編集ツールの最初の人へ応用は中国から?

Nature誌の2016年11月15日の報告では、2016年10月28日にヒトで初めてとなるCRISPRを用いた臨床試験が始められたとあります。それは中国の四川大学のLu You氏率いるチームで、CRISPR/Cas9を使用してPD-1遺伝子を除去し、その免疫細胞を転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に戻してガンの治療を試みたということです。しかしその後の報告が全くなく、どうなっているのかぜんぜん分からない状況です。

また2018年11月には中国で「世界初のゲノム編集赤ちゃん」が誕生という事件がありました。これまでは子孫に遺伝しない生殖細胞以外の細胞でゲノム編集が許可されてきましたが、まだ安全性が分かっていないCRISPRツールを受精卵にダイレクトに使用し、すでに子供が誕生しているとするニュースは、世界を震撼とさせました。

中国はアメリカとの競争のためか医学の分野で無理な研究をばく進させているようですが、「倫理的に承認されていない」そして「科学的に実行可能と分かっていない」方法を無理に押し進めても、世界からは受け入れられず、その行為は歴史に残らないようです。

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