マイクロプラスチックより小さいナノプラスチックの影響をホタテで調べた研究

健康情報

ある大きさのナノプラスチックは臓器に蓄積されてしまうという驚きのデータが出ておりますのでご報告させていただきます。

「Environmental Science & Technology」に発表された論文(英語)を「National Geographic」さんがレビューしておりまして、日本語のレビューも発表されましたので、それを紹介させていただきます。

欧州ホタテ、全身にプラスチック粒子残留の可能性

ニュースタイトル「欧州ホタテ、全身にプラスチック粒子残留の可能性」

自然環境に相当する汚染濃度で実験、小さなウイルスほどのナノ粒子

英国沖で採取されたヨーロッパホタテガイ(Pecten maximus)を使い、プラスチック粒子の摂取状況を研究した結果が発表された。論文によると、粒子のサイズによっては、腎臓、えら、筋肉など、全身に行き渡ることが明らかになった。しかも、すべての過程が6時間以内に完了する。

論文は11月20日付けの学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された。研究を率いたのは南東イングランドにあるプリマス大学のチームで、スコットランドやカナダの科学者も参加した。

野生生物のプラスチック摂取に関する研究結果が、目下、続々と報告されている。今回の研究もそのひとつであり、いまだに明らかになっていない食物連鎖や人体への影響に関する疑問を投げかけている。

今回の研究の新しい点は、プラスチックの摂取量にとどまらず、その粒子が体内に取り込まれた結果にまで踏み込んだ点だ。そして、小さなウイルスほどの24ナノメートルのプラスチック粒子は、全身の主要臓器に驚くほど素早く散らばった。

24ナノメートルと250ナノメートルの違い

研究チームを率いたプリマス大学国際海洋研究センターの所長リチャード・トンプソン氏は、研究成果だけでなく、プラスチック粒子の追跡方法においても「画期的」と表現する。

「有機体への影響を理解したいのであれば、ナノ粒子が摂取、排出される仕組みだけでなく、体内の組織への分布についても理解することが不可欠です」と、トンプソン氏は声明で説明している。

論文によれば、世界の海面には推定51兆個のマイクロプラスチックが浮遊しているという。

論文の著者の1人で、研究を主導したプリマス大学、マヤ・アル・シド・チェイク氏は、ホタテが食べたプラスチック粒子を追跡するため、「斬新なアプローチ」を用いたという。具体的には、追跡可能なラベル付きのナノプラスチックを作成し、ホタテが暮らす沿岸水域の「自然環境に相当するプラスチック濃度」の水槽にホタテを投入した。

その後、プラスチックを含まない海水にホタテを戻すと、24ナノメートルの小さい*は体内から消えるまでに14日かかったのに対し、250ナノメートルの粒子は48日後も残っていた。ただし、250ナノメートルの粒子は全身には行き渡らず、内臓だけに蓄積した。

なお、ホタテがプラスチックに長くさらされた場合の影響や、ホタテを食べた人へのリスクについてはまだわからない。

National Geographic より

※ 記事内の翻訳がおかしい部分
9段落目にある「24ナノメートルの小さいは体内から消えるまでに」

「24ナノメートルの小さい粒子は体内から消えるまでに」
のように粒子が抜けているように考えられます。

このNational Geographicのレビューには原著論文(英文)のリンクが抜けているようなので以下に示しておきます。(無料で全てのページがご覧いただけます。)

Uptake, Whole-Body Distribution, and Depuration of Nanoplastics by the Scallop Pecten maximus at Environmentally Realistic Concentrations.
Environ Sci Technol. 2018 Dec 18;52(24):14480-14486. doi: 10.1021/acs.est.8b05266. Epub 2018 Dec 3.
Al-Sid-Cheikh M, Rowland SJ, Stevenson K, Rouleau C, Henry TB, Thompson RC

PDFバージョンはこちら ↓(出版物と同じフォーマットでご覧になれます。読みやすいです。)

Uptake, Whole-Body Distribution, and Depuration of Nanoplastics by the Scallop Pecten maximus at Environmentally Realistic Concentrations.(PDF)


Seigoの追記

この記事のサマリーはこういうことでしょう。

次の2つのサイズのナノプラスチック(放射性標識(14C)ポリスチレン)を用いてホタテへの取り込み実験を行った。
ナノプラスチック濃度は自然環境に相当する濃度(<15 μg L-1)で試験した。
🔵 24ナノメートル (nm)のプラスチック:全身の主要臓器に素早く散らばり、海水からナノプラスチックを除いた後は14日後に体内から出ていた。
■■

🔵 250ナノメートル (nm)のプラスチック:全身に行き渡らず臓器に蓄積し、海水からナノプラスチックを除いた後は48日たっても完全に臓器から出て行かなかった。

24nmのように素早く全身に行くのは恐ろしいが14日後にすべてが体外に出て行くということはろうほうではんないだろうか。

問題なのは250nmの方で全身には行き渡りにくいが、臓器に蓄積してそれが除けないという結果でした。これはもしプラスチック粒子に発がん性物質などが含まれている場合、長期暴露ということになるので、これは将来問題になる可能性が高い。

今回の研究で使われた「ポリスチレン」の基本構造(出展:Wikipediaより)

ナノプラスチックは実際どのくらい大きさか?

24や250ナノメートル (nm)と言われてもどのくらいのサイズかイメージがわかないので、代表的な分子や生物の大きさを以下に書き出してみました。

0.1 nm(ナノメートル)水素原子の直径
0.8 nm アミノ酸 (Amino Acid)
2 nm DNAアルファ螺旋(DNA Alpha helix)の直径
20 nm リボソーム (Ribosome)
■ ■ 24nm  ナノプラスチック
25 nm 微小管 (Microtubule)
30 nm 小型ウイルス(ピコルナウイルス)30nmのライノウイルス属
50 nm 核膜孔 (Nuclear pore)
100 nm HIV(エイズウイルス
120 nm インフルエンザ (influenza virus)を含む )
150-250 nm マイコプラズマ(Mycoplasma)などの小さなバクテリア(bacteria)
■■ 250 nm  ナノプラスチック
2 μm(= 2000 nm) 大腸菌 E.coli – 細菌
3 μm ミトコンドリア (Mitochondrion)
5 μm 葉緑体(chloroplast)の長さ
9 μm ヒト赤血球 (Human red blood cell)

細胞の大きさ」(出展:Wikibooksより)

250nmという大きさは、インルフエンザやエイズウイルスよりかは大きいが大腸菌よりかは小さいという大きさである。

また24nmという大きさはほとんど分子レベルの小ささであり、プラスチックが最終的に全てがバラバラになった時のサイズではないかと思わせるくらい小さい。細胞の中心にある核の角膜の大きさ(50nm)より小さいのだから体の中に浸透するのは速いの当然で、出て行くのも速いそうなのであまりこの大きさは気にしなくてよりのかもしれない。

参考情報

究極のヘルシーライフのTwitterより



 

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