アンチエイジング薬メトホルミンとラパマイシンはクローン病を治療できる!?【最新研究】

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米国の最新研究によりますと、アンチエイジング薬として脚光を浴び始めているラパマイシンとメトホルミンがなんとクローン病の治療効果をもっていたという論文が発表されました。

この話は少し難しいかも知れないので、アンチエイジング薬(メトホルミンとラパマイシン)の説明をし、その後にアラバマ大学のプレスリリースをご紹介します。

クローン病の原因はある細菌の鞭毛タンパク質が原因の可能性

腸内細菌の中でも特にラクノスピラ科 (Lachnospiraceaeという腸によくいるタイプの菌は、酪酸を産生するので結腸がんを防止する(文献 ← オープンアクセス)などの善玉菌ではありますが、糖尿病を引き起こす(文献「ラクノスピラ科細菌による腸内コロニー形成は肥満マウスの糖尿病の発症に寄与する」← オープンアクセス)という悪いこともするようです。

ラクノスピラ科の鞭毛の成分のフラジェリンというタンパク質がなぜか抗原抗体反応で腸に炎症を起こしてしまい、クローン病などの大腸炎の原因の一つということです。

アンチエイジング薬の効果
🔵 大腸炎のモデルマウスにメトホルミンラパマイシンという2つの薬剤を腹に注射すると、mTORを阻害し、AMPKを活性化し、炎症が抑制された。そしてフラジェリンに反応してしまうCD4+ T細胞, 特にCD4+ Tエフェクター細胞は10分の1に減少した →クローン病の症状が軽減した

抗生物質のメトホルミンとラパマイシンは両方ともアンチエイジングの薬というのがとても興味深いですね!

メトホルミンとは?

メトホルミンは世界中で多くの人に飲まれている、とても安くて安全な2型糖尿病の薬です。2型糖尿病患者の動脈硬化を抑えることで、心血管疾患のリスクを減らすことが報告されています。大腸の腫瘍など抗がん作用抗酸化作用も知られています。メトホルミンはAMPK(AMPキナーゼ)を活性化して糖の代謝を上げることで血糖値を下げます。またmTORを抑制します。延命効果の研究もされており、マウスでは寿命が5%伸びたり、14万人以上の大規模な研究でメトホルミンを飲んでいる70代患者は死亡率が15%減ったり糖尿病じゃない人より長生きだったなど報告されています。(文献「老化を標的とするツールとしてのメトホルミン オープンアクセス
メトホルミンの副作用
メトホルミンの副作用は、乳酸アシドーシスビタミンB12欠乏などがあり、抗酸化物質と一緒に摂ると、長寿効果が減るかもしれないそうです。
メトホルミンの寿命延長効果
メトホルミン ( 英: Metformin )は、なぜか日本ではあまり使われていません。
メトホルミンが寿命を延ばすという研究報告があります。

「メトホルミンに寿命と健康でいられる期間を示す健康寿命が延ばすアンチエイジングの効果があると期待しています。糖尿病患者だけでなく健常者でも、抗加齢の効果があるのではないかと考えられます」と、今回の研究責任者バルジライ教授はコメントで述べています。

英国で行われた大規模研究「UKPDS」では、メトホルミンは他の治療薬と比べ、2型糖尿病患者の動脈硬化を抑制し、心血管疾患の発症リスクを減少させることが確かめられています。

米国立老化研究所の研究では、メトホルミンを投与したマウスはそうでないマウスに比べ、 寿命が5%延びる ことが明らかになっている。メトホルミンを投与したマウスは摂取カロリーが減り、コレステロール値が下がり、腎臓病やがんの発症が減っていた。

また、バルジライ教授らの研究チームが、約7万8,000人の糖尿病患者とやはり同数の糖尿病ではない人を対象とした大規模研究では、メトホルミンによる治療を受けている糖尿病患者は長生きすることが示された。メトホルミンを投与された70歳代の糖尿病患者は、糖尿病でない人に比べ死亡率が15%減少した。

メトホルミンにがん予防の効果があるという研究も多数報告されている。糖尿病患者はがんの発症リスクが高いことが知られている。インスリンおよびインスリン様成長因子が一部のがんを促進し、また2型糖尿病患者は診断される前に血液中のインスリンレベルが高い状態が何年も続いていることが多いからだ。

メトホルミンインスリン産生量を増大させないため、がんの成長を抑える可能性がある。また、がん抑制遺伝子を活性化する作用があり、血管にダメージを与える活性酸素が増えるのを防ぐ抗酸化作用もあると考えられている。

ラパマイシンとは?

ラパマイシンイースター島で発見された放線菌 Streptomyces hygroscopicus が作る抗生物質で、ポリネシア語「ラパ・ヌイ(=イースター島)」の「ラパ」に、菌の抗生物質を意味する「マイシン」をつけて「ラパマイシン」と命名されました。しかし今は抗真菌薬としては使わないで、腎臓などの臓器移植による拒絶の予防薬リンパ脈管筋腫症の治療薬として用いられます。

インターロイキン2(IL-2)を下げてT細胞やB細胞の活性化を阻害する働きがあります。

また mTOR(タンパク複合体)を抑制するので、オートファジーが働き 長寿効果 抗がん作用 平滑筋細胞増殖抑制作用などがあるとされます。ちなみにmTORはラパマイシンの標的分子として発見されたので、mammalian Target Of Rapamycin(mTOR)と名づけられました。

クローン病の予防的治療の可能性(本題)

炎症性腸疾患の一種であるクローン病は、マウスモデルでクローン病患者の免疫反応性T細胞を用いて予防効果があることが実証されています。

この研究は、アラバマ大学バーミンガム校のチャールズ・エルソン教授が主導し、Tm(メモリーT)細胞というT細胞の仲間にフォーカスしました。UABの研究者は、トリプルパンチ処理でTm細胞を除去し、T制御性T細胞またはTreg細胞の数を増やしました。この結果はいずれも、T細胞を移植したマウスで大腸炎を予防でき、クローン病患者の血液サンプルから分離された免疫反応性CD4陽性T細胞に同様の阻害効果を示しました。

「この結果は炎症性腸疾患を予防あるいは改善するために可能となる免疫療法をサポートします」とエルソン教授は言います。

Science Immunology 誌で報告されたトリプルパンチ治療がなぜ機能するかを理解するには、ある程度の基礎知識が必要でしょう。

炎症性腸疾患は、遺伝的に罹りやすい宿主の腸内細菌に対して免疫応答が活性化しすぎることが原因です。短命のエフェクターT細胞による過剰反応を起こす微生物抗原の一つは、細菌べん毛を構成するタンパク質のフラジェリンというものです。これは、細菌がよく動けるようにプロペラのように回転する長い尾のような構造です。

免疫優勢フラジェリンの1つのグループは、CBir1を含むラクノスピラ科のフラジェリンです。クローン病患者の半数以上が、CBir1や関連するフラジェリンに対する血清学的反応性が上昇しています。

兵士のように感染と戦う短命のTエフェクター細胞とは違って、メモリーT(Tm)細胞フラジェリンと前にあったことを覚えている監視員として働きます。それは長生きで不活発で、代謝が低いです。フラジェリン抗原との新たな出会いによって再活性化されると、深い代謝変化を受けて、すぐに多数の病原性Tエフェクター細胞が増えます。

この代謝スイッチは、Tm細胞にあるmTORによって制御されます。

したがって、mTORの活性化はT細胞の増殖に必要で、活性化されたTm細胞を作るための避けられない代謝チェックポイントになります。またフラジェリンに初めて会うTナイーブ細胞のチェックポイントでもあります。

したがって、エルソン教授らは①フラジェリン抗原によるCD4+ メモリーT細胞 または ナイーブT細胞の活性化と同時に、②mTOR阻害の使用による代謝チェックポイントのシャットダウンが、アレルギーという抗原への正常な免疫反応の死または欠如をもたらすと仮定しました。この効果はトリプルパンチ治療の2つの部分で構成され、3番目はTreg細胞の誘導です。

活性化は、1つのCBir1エピトープの複数の繰り返しを持つ合成ペプチドによって促されました。このようなペプチドは自然免疫応答を活性化することなく、記憶細胞を選択的に刺激できます。

代謝チェックポイントをシャットダウンするために、2つの既存の薬、ラパマイシンとメトホルミンを使いました。ラパマイシンmTORを直接阻害し、メトホルミンは、mTOR活性を負に調節するAMPKというキナーゼを活性化することで阻害を強めます。

エルソン教授はこの治療細胞の活性化を、CAMCI(付随する代謝チェックポイント阻害)と呼んでいます。

マウスへのCAMCIの非経口投与は、腸内細菌フラジェリン特異的CD4陽性T細胞の標的化に成功し、有意な抗原特異的CD4陽性T細胞死、CD4陽性記憶応答の発達障害と再活性化障害、CD4陽性のTreg細胞応答の実質的な誘導をもたらしました。それはマウスモデルの大腸炎を予防し、クローン病の患者から分離された腸内細菌叢フラジェリン特異的CD4陽性T細胞に対して同様の抑制効果を示しました。

クローン病患者の将来の治療の可能性については、フラジェリンのみを標的にすることはあまり効果がない可能性が高いとエルソン教授は述べています。「代わりに、複数のCD4陽性T細胞フラジェリンエピトープを含む合成マルチエピトープペプチドを使用して、多くの微生物相-フラジェリン反応性CD4陽性Tm細胞を標的にすることを期待しています」と述べています。「特定の腸内フローラ抗原に対する血清学的またはCD4陽性T細胞の反応に応じて、このCAMCIアプローチは免疫療法として、エピトープのさまざまな組み合わせを持つ個人に合わせて調整できます。」

エルソン教授はこのCAMCIをクローン病患者の寛解を維持するための断続的なパルス療法として想定していると述べています。「そして将来、自己抗原エピトープがより研究されることで、1型糖尿病や多発性硬化症などの炎症性または自己免疫疾患を治療するために使用できる可能性があります。」と彼は言いました。

先進国では、1,000人に3人以上が炎症性腸疾患を患っています。その中でも主にクローン病と潰瘍性大腸炎は、かなりの罹患率と多額の医療費であり、現在の治療法ではこれらの疾患を治することはできませんん。

引用文献 & 参考文献

🔵 プレスリリース(アラバマ大学 – バーミンガム):Potential preventative treatment demonstrated for Crohn’s disease(UAB News)December 21, 2020

🔵 参考文献:CD4+ T cell activation and concomitant mTOR metabolic inhibition can ablate microbiota-specific memory cells and prevent colitis, Qing Zhao et al.
Science Immunology (2020). DOI: 10.1126/sciimmunol.abc6373

seigoの追記

原著論文によりますと、この研究のすごいところは、クローン病の原因の1つになっているメモリーT細胞の除去に成功したことだそうです。その方法は以下のような2つ方法を組み合わせることにより達成されました。

クローン病の原因となるメモリーT細胞の除去法(マウスモデル)
① アンチエイジング薬(メトホルミンとラパマイシン)によるmTOR複合体の阻害
② フラジェリンエピトープを含む操作されたペプチドによるCD4+ メモリーT細胞 または ナイーブT細胞の活性化

アンチエイジングの薬が役に立つとは驚きですね!

ヤフー知恵袋からの情報ではメトホルミンはジェネリックなら日本の薬局から手に入るそうです。

ヤフー知恵袋の情報を以下に貼っておきます。


質問 :el3********さん、2020/9/28 19:33

老化を治す薬、若返る薬として、「メトホルミン」という糖尿病の薬が効果あるらしいのですが、健常者でも処方してもらえるのでしょうか?
「LIFE SPAN(ライフ スパン) 老いなき世界」 (著:デビッド・A・シンクレア)で既に老化を治す薬としてアメリカでも臨床実験が行われているそうです。

本当にアンチエイジング効果があるのでしょうか?

もし本当なら、自分も飲みたいのですが、健常者は買えないのでしょうか?

回答1 :iro********さん、2020/9/29 14:22
あきらかに効果ありますし、実際に実証されています。

私の信頼する糖尿病の専門医も、患者に投与して効果をあげていますし、本人も飲んでいます。

あきらかに、その効果を体感して、古い細胞が追い出され、

あらたな細胞のみずみずしさを体感していますね。

高血糖、高インスリン⇒発がん作用
低血糖、低インスリン⇒がんと老化の予防、治療

僕は、糖尿病ではないですが、寿命を延ばしたいので、アンチエイジングとして、老化防止して、メトホルミンを250mg毎朝1錠の半分を飲んでます。

500mg錠を買って半分に分割して飲んでいます。

僕の知っている内科医の先生は、糖尿病ではない人でもメトホルミン250mg程度ならなんともないでしょうと言ってました。

糖尿病患者でメトホルミンで治療した患者と、他の薬で治療した患者ではメトホルミンで治療した患者の方が8年も寿命が長かったという話です。

最近アメリカでメトホルミンで本当に寿命が延びるかどうか3000人規模の臨床試験が始まりましたね。

どのような結果になるのか楽しみです。

この薬を飲むど、食べてる途中でから食欲がおさまるような感じがします。

初めて飲んだ時のみお腹がゆるくなりましたが、それ以後はなっていません。

糖質の少ない食事や量が少ない日は身体が運動した後の様な感じがします。

回答2 :iro********さん、2020/9/30 11:30

日本で健常者が処方してもらうのは難しいでしょうね。

なので、僕は海外からネット通販で買っています。

僕が買っているのはジェネリックなので値段も高くなくて続けやすいです

不老の薬「メトホルミン」ジェネリック薬
https://doctor.importmedical.work/2020/09/28/apo-metformin/


今までは糖尿病患者さんに限ってアンチエイジング効果があったそうなので、健常者にも抗老化効果が出てくれば爆発的なヒットを呼びそうですね!
ただ副作用(乳酸アシドーシス, ビタミンB12欠乏)もありますので手放しで喜べるわけではありません。
メトホルミンの話題が出てくる「LIFE SPAN(ライフ スパン) 老いなき世界」 という著書のリンクを以下に貼っておきます。

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