関節リウマチの新しい治療法: ELMO1をブロックすると症状が軽減される!? (2019年米国研究)

ニュース/レビュー

今回は驚きの関節リウマチ発見は関節炎のための新しい治療を指し示すという報告です。

米国バージニア大学が最新研究をプレスリリース(英文)しましたので、それを翻訳しましたものをご紹介します。

ニュースタイトル「意外な関節リウマチ研究の知見は関節炎のための新しい治療を指し示す」

バージニア大学医学部の研究者らは、慢性関節リウマチの予想外の原因を特定しましたが、それは痛みの発作を解明するのに役立つかもしれません。この発見は自己免疫疾患の新しい治療の可能性を示唆するもので、簡単な血液検査で発症リスクが高い人々を検出できるかもしれません。

この有望な発見は、医療のブレークスルーを作り、病気との闘いを推進することを目的とした提携事業体であるバージニア大学医学部とイノヴァヘルス(Inova Health)の共同研究による初の実績です。この件は関節炎の発見をバージニア大学医学部のコディラヴィチャンドラン(Kodi Ravichandran)研究室で行い、このチームのリソースと専門知識をイノヴァヘルスの研究者、トーマスコンラッド(Thomas Conrads)のものにTHRIV UVA-Inovaシード基金を通してそれらを組み合わせることによって促進されました。必要?

慢性関節リウマチの理解

ELMO1の構造(出典:Wikimedia Commons, By JMOL Development Team – JMOL, CC0, Link


この慢性関節リウマチに関する新たな知見は予想外の方法でもたらされました。ラヴィチャンドラングループの研究者であるサーニャアランジェロヴィック(Sanja Arandjelovic)は、ELMO1と呼ばれる遺伝子を取り除くとマウスの関節炎症状が緩和されることを見出したので、そこから炎症性関節炎の炎症の原因をよりよく理解しようとしていました。当初、アランジェロヴィックとラヴィチャンドランは、ELMO1がないと炎症の増加をもたらすと考えていたので、これは特に驚くべき発見でした。

UVAの微生物学、免疫学および癌生物学の学科長を務めるラヴィチャンドランは、「最初それを聞いて、全くの驚きでした」と振り返り、「これは歓迎すべき発見です。最初にこの研究を始めた頃はその科学的問題を完全に理解していなかったということです。世界中の何百万もの人々に影響を与えているため、この観察結果をよりよく理解する必要があると感じました。」と語りました。

この並外れた結果をより深く掘り下げて、研究者たちはELMO1好中球と呼ばれる白血球の機能を通して炎症を促進すると決定しました。Ravichandranは、好中球が潜在的な脅威を感知しそれに反応するので、好中球を体の「第一線の防御」と表現しました。「通常、それらは多くのバクテリアの感染に対抗してくれるので私たちにとっては良いものです。」と彼は言いました。「しかし、組織をかなり傷つける有効的な炎症を多く生み出すこともよくあります — 彼らがあまりにも長くまとわりついたり、あまりにも多くの好中球が入ってきたり — この場合、関節に浸潤し、関節炎になるでしょう。」

関節の炎症のイメージ(出典:naturwohl-gesundheitによるPixabayからの画像)


研究者らはまた、好中球をより活発にし、より多くの関節に侵入して炎症を誘発する可能性があるとされるELMO1遺伝子には自然変異があることを発見しました。(将来的に血液検査でこの自然変異を検出することが可能となるはず。)

(ここが特にクールなところですが):通常、医師は人体でELMO1のような遺伝子の効果をブロックしようとすることを躊躇します。そのような遺伝子は体内で多様な役割を果たすからです。しかしラヴィチャンドランは、ELMO1はそうではないと考えています。彼は「ELMO1は好中球内にのみ、非常に特異なセットのタンパク質と結合するが、他の細胞型で試験したらそうはならなかった」として「おそらく、特別なタイプの細胞にのみ影響を与えるかもしれません。」と述べています。後半の結果は、イノヴァヘルスのコンラッドグループが好中球のELMO1プロテオミクスパートナーの高度な分析を行った共同研究から生じたものであって、それらの多くは以前にもヒトの関節炎との関連が知られていました。これは、慢性関節リウマチにおけるELMO1の役割についてのさらなる検証を提供しました。

ラヴィチャンドランは、研究室マウスでELMO1をブロックすると他の問題を引き起こすことなく関節炎の炎症が軽減されたと語りました。彼の研究室は現在、ELMO1の機能を阻害する可能性のある薬物を識別しようとしていますが、更にELMO1遺伝子の変異(polymorphism/多型)についての試験をも計画しています。

「基礎研究が多くの人々に影響を与える臨床的に関連のある問題に関する新たな発見にどのようにつながる可能性があるかということの一例です」とラヴィチャンドランが述べています。

研究者らは、彼らの調査結果を科学誌 Nature Immunology に発表しました。

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引用ニュース & 原著論文

🔵 英語ニュース:Surprise rheumatoid arthritis discovery points to new treatment for joint inflammationUniversity of Virginia

🔵 引用原著論文: A noncanonical role for the engulfment gene ELMO1 in neutrophils that promotes inflammatory arthritis (Nature Immunology, volume 20, pages141–151 (2019) )

Seigoの追記

私はこの分野は専門でなかったので、ELMO1のことを調べてみますと、その活性をリンパ球で最初に見つけたのは九州大学の福井宣規グループでした。

- DOCK2 regulates Rac activation and cytoskeletal reorganization through interaction with ELMO1
Sanui T1, Inayoshi A, Noda M, Iwata E, Stein JV, Sasazuki T, Fukui Y.
Blood, 2003 Oct 15;102(8):2948-50. Epub 2003 Jun 26.)

この福井教授は最近でも活躍されていて、Navar まとめにこんな記事が載っていました。

アトピー性皮膚炎 根本的治療に光!世界で初めて 発症メカニズムを解明!九州大学の福井宣規 教授(naver まとめ)更新日: 2019年01月15日

船井教授はスゴイね。こちらの記事のほうが上記のニュースよりも面白いのではないかと思ってしまいました 😅

今度機会がありましたら、船井教授の論文もレビューしたいと思います。

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