新型コロナの重症化はサイトカインストームが原因!? 食べ物や漢方, サプリで防げる可能性【論文引用あり】
執筆日:2020年3月20日、更新日:2020年12月27日
新型コロナ(COVID-19)は高齢や持病のある方は重症になりやすいですが、感染者の約80%は軽症とのことです。とはいえ若い方も含め、軽かったのに急に悪化して命を落としてしまうこともあるようです。
動画で突然バタッと倒れる人を見て、えっ? 何が起こったの? と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
では、なぜそんなことが起こるのでしょうか?
原因はサイトカインストームではないかと言われています。
この記事のもくじ
サイトカインストームとは?
サイトカインストームは、SARSやMARSやインフルエンザ、エボラでも起こります。サイトカインの嵐(ストーム)、つまりサイトカインという低分子のタンパク質やラジカルなど150以上もの炎症性メディエーター(伝達物質)が血中にすごく増えると、重篤になります。
これらのサイトカインの放出によって、疲れがひどくなったり、または皮膚が赤くなったり腫れあがったり、さらに 高熱 が出て最悪の場合は 多臓器不全 になって 命を落とす こともあるのです。
サイトカインはそもそもウイルスから体を守ろうという連絡網みたいなものです。それがないとウイルスと戦うことができません。
でもサイトカインがどういうわけか過剰になってしまうと、免疫細胞が細胞や器官を激しく攻撃してサイトカインストームが起こってしまいます。
サイトカインストームをさらに深掘り
サイトカインには炎症性と抗炎症性があります。抗炎症性はIL-10やTGF-β(トランスフォーミング増殖因子)など、炎症を抑えようとしてくれます。サイトカインストームになると増えるのは、主に炎症性のサイトカインです。
炎症性サイトカインはこんなに種類があります。
炎症性サイトカイン
・インターロイキン(IL-1, IL-6)
・腫瘍壊死因子 (TNFα)
・顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
・C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)
・ケモカイン(CCL2)
・ケモカインリガンド3(CCL3)
非炎症性サイトカイン
・IL-10
・IL-1Raなど
新型コロナウイルスによるサイトカインストーム(上海市の医学専門家より)
一部の患者は初期段階では症状が深刻でなかったにも関わらず、急に症状が悪化し数日内に重症になり、さらには 死に至る こともある。(上海市)復旦大学付属中山医院重症医学科副主任の鐘鳴氏は、患者の体内でサイトカインストームが発生し、各器官の機能が衰弱した可能性があると述べた。
サイトカインストームとは、感染症により組織の免疫細胞が活性化され、その過度な損傷が生じることを指す。正常な免疫は保護であり、過度な免疫は損傷だ。サイトカインストームは肺のほか、肝臓、腎臓、心臓などの器官を損ねる。発生後に患者の症状は往々にして急転直下し、すぐに 意識不明 、 呼吸困難 、息切れ、 息詰まり が発生する。それから 血中酸素飽和度が低下 し、さらには 血液凝固障害 が発生し、 臓器が衰弱 する。
「japanese.china.org.cn」より抜粋。2020-02-11
重要ポイント:新型コロナがレニンーアンギオテンシン系の酵素ACE2にくっついて細胞内に侵入する
新型コロナウイルスはSARSと同じように、細胞表面にあるACE2(エイスツー)という酵素に結合して細胞の中に入りますが、このACE2はレニン-アンギオテンシン系という血圧をコントロールしている大きなシステム内の一つの酵素です。もし大量の新型コロナウイルスが体内で作られこの酵素にくっついてしまうと、ACE2の本来あるべき機能を損ない、レニンーアンギオテンシン系全体を乱してしまいます。
実はレニン-アンギオテンシン系はサイトカインストームと関係があります。
【レニンーアンギオテンシン系と炎症の関わりについて】
アンギオテンシンIIは免疫応答にかかわる単球も産生することができ、また単球自身はアンギオテンシンIIの受容体を発現しています。アンギオテンシンIIは炎症性のサイトカインやケモカインの産生を促進することが知られています。アンギオテンシンII受容体やアンギオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑える降圧剤は、炎症性のサイトカインの産生を抑えることになるため、動物モデルでは関節炎など炎症の強い病気を軽くすることが知られています。また、これらの降圧剤はIFN-γやIL-17などのサイトカインを産生するT細胞(Th1細胞、Th17細胞)の作用を抑えたりします。(参考文献6)
高血圧の方は、ACE(エース;ACE2とは別の酵素)の阻害薬を服用します。ACE阻害薬はサイトカインストームを抑える可能性があることが研究で示唆されています。
ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB)をサイトカインが関連するいろいろな炎症性の疾患に使ったというレビューが公表されており、この2つの阻害薬は理論的にもサイトカインストームを抑制し得るとされました。
詳しいことは次の記事で紹介しました ⬇️
ACE酵素を阻害する食品はサイトカインを減らすという共通点
ACE阻害薬と似たような作用のある成分を含む食べ物としてイワシ、ワカメ、ごま、のり、醤油、ローヤルゼリーがあります。(参考文献5)
特定保健用食品として認可を受けた食品の関与成分の多くは、ACE阻害作用を基本としています。
これらは免疫作用とも密接に関係しています。上記の食品はサイトカインを減らす可能性のある食品で、なんだか和食ですね。
サイトカインストームを漢方や食べ物で防ぐ
麻黄(まおう)・麻黄湯
漢方薬の麻黄(Ephedra sinica)の成分はToll様受容体というウイルスなどを感知してサイトカインを増やすのを阻害することで、インフルエンザなどによる呼吸器の炎症を防いだり、抗ウイルス作用を示します(論文1 ← オープンアクセス:論文が無料で読めます)PDF書類また麻黄湯という麻黄、シナモン(桂皮)、杏仁(杏仁豆腐の原料)、リコリス(甘草)をブレンドした漢方薬は、麻黄とシナモンにサイトカインを減らす効果と、杏仁とリコリスは免疫力をアップする効果がわかっており、インフルエンザ治療薬として保険適用されています。風邪の引き始めに服用すると良いですが、虚弱な方、心血管系や腎臓、甲状腺機能亢進症などのある方は医師と相談してください。
※ 予防目的で摂取するものではありません。 麻黄湯は 肝臓に副作用 が出やすいので注意が必要です。あくまでも風邪のような症状が出始めたときに、重症化させないために(サイトカインストームを起こさせないために)、免疫系を強化/適正化するという感覚で短期間に飲むのが良いそうです。
購入できるお店はどこ?
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麻黄湯の関連記事「麻黄湯がインフルエンザ治療の新たな選択肢に」
麻黄湯がインフルエンザ治療の新たな選択肢に(順天堂大学医学部総合診療科准教授・内藤俊夫氏に聞く)要約:シナモン(桂皮)と麻黄にはサイトカインの産生抑制の効果が確認されていますし、また杏仁とリコリス(甘草)には免疫賦活作用があることが報告されています。2012/02/23
緑豆と緑茶
サイトカインのスイッチをオンにするHMGB1(High-mobility group box 1)というたんぱく質があり、これをオフしてくれるのが緑豆の皮に含まれるビテキシン、イソビテキシンという抗酸化物質です。
そして緑茶の成分のエピガロカテキンガレート(EGCG)というカテキンと組み合わせることで、効果的にサイトカインのスイッチをオフにしてくれるそうです。
研究では敗血症で起こる炎症からの生存率が82%まで上がりました。(文献7、8)
緑豆というと緑豆モヤシ、台湾のデザート「豆花」にも入ってますね。
Life Extension社がこの配合でサプリを販売しています。〔緑豆+緑茶(EGCG)〕
> サイトカインサプレスEGCG入り、植物性30粒(Life Extension)【iHerb】
〔Life Extension社のレビュー記事(英文):Turn Off the Cytokine Switch by Life Extension 〕
ビタミンD
ビタミンDはインフルエンザによる死亡のリスクを減らしてくれます。ビタミンDが腎臓で活性型の1,25-ジヒドロキシビタミンDというホルモンのような物質になりますが、これが炎症性サイトカインの産生を減らすのと、抗菌ペプチドの産生を増やすという両方のメカニズムでインフルエンザなど呼吸器系のウイルス感染のリスクを減らすということです。(文献9)
ネットで購入:
> ビタミンD-3、5,000 IU、120ソフトジェル(Now Foods)【iHerb】
フコイダン
フコイダンはもずく、めかぶ、昆布、ワカメなど褐藻類に多いヌメッとした食物繊維です。放射線による肺炎など、肺の炎症で発生するサイトカインを抑制することで減らしてくれるという研究があります。(参考文献2 ← オープンアクセス:論文の全文を無料でご覧になれます。)
またTNFαやIL-6、ケモカインを抑制してウイルス感染による肺炎を緩和できるかもしれないそうです。(参考文献3)
モズクなどを料理して食べている暇はないという方にはフコイダンの含まれたサプリがあるので参考までに ↓
> フコイダン ウィズ マリテク926、植物性カプセル60粒(Life Extension)【iHerb】
もずく
モズクもサイトカインストームを防ぐ作用があると言われています。もずく、めかぶ、昆布、ワカメなど褐藻類に多いフコイダンは、
放射線による肺炎など、肺の炎症で発生するサイトカインを抑制するという研究があります。(参考文献2 ← オープンアクセス:論文の全文を無料でご覧になれます。)
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朝鮮人参(ジンセン)
ジンセンもサイトカインを防ぐ作用があると言われています。(参考文献4)> 有機 田七人参 サプリメント 有機JAS認証 和漢堂 【Amazon】
大豆やピーナッツオイル, 卵黄などに含まれるPEA
さらに大豆(レシチン)、ピーナッツオイル、卵黄などに含まれるパルミトイルエタノールアミド(PEA)はPPARαのリガンドで鎮痛薬ですが抗炎症作用もあります。(参考文献9) ただしこれまでサイトカインストームの治療に使われたことはありません。N-アセチルシステイン(NAC)
・抗酸化物質の一種であるN-アセチルシステイン(NAC)はH5N1ウイルスの複製を阻害したり炎症性サイトカインを減らすことが示されています。(参考文献10)⭐️ ⭐️ ⭐️
甘草などに含まれるグリチルリチンはデヒドロゲナーゼを阻害して、H5N1ウイルスの複製と炎症に関する遺伝子の発現を阻害することが示されています。またビタミンCも重度の鳥インフルエンザに良いとされますし、ポリフェノールやフラボノイドなどの植物の抗酸化物質も細胞のダメージや死亡率の低下に役立つとされますが、抗酸化物質だけでは十分でないので抗ウイルス剤と併用が望ましいそうです。
ターメリック
とても強い抗酸化物質で風邪やインフル予防、抗炎症、免疫力アップに用いられます。またサイトカインストームを抑えるという活性が見つかっていて、エボラの治療に役立つのではないかという論文も出ています。
文献「サイトカイン放出とサイトカインストームのクルクミン抑制。 エボラおよびその他の重度のウイルス感染症患者に対する潜在的な治療法」(8 ← オープンアクセス)
レスベラトロール
文献「レスベラトロールは、TGF-βシグナル伝達を標的とするmiR-193a変調により、SEB誘発の急性肺損傷および死亡からマウスを保護します。」(文献9)サイトカインストームを抑え込む可能性のある薬は?
病院で治療可能なのは、免疫調節薬によって重度のインフルエンザの死亡率と臓器損傷を軽減できることが確認されています。
副腎皮質ホルモン
抗炎症薬として急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)に全身投与で良く使われますが、効果がない場合もあるようです。・スフィンゴシン-1-リン酸受容体1アゴニスト
・COX阻害薬 セレコキシブ、メサラジン
・抗TNF療法 エタネルセプト TNFは急性ウイルス性疾患(インフルエンザウイルス、デングウイルス、エボラウイルスなど)の重要なサイトカインです。
・免疫グロブリン静注療法 SARSやH1N1ウイルスによるサイトカインストームの治療に使用されています。
・PPAR標的薬
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)のPPAR-α、PPAR-β、PPAR-γを活性化すると抗炎症作用があります。
ロシグリタゾン、ピオグリタゾンがインフルエンザの重症に最も有効とされ、レッドクローバーの成分のビオカニンAもあります。
🔵 参考文献:The cytokine storm of severe influenza and development of immunomodulatory therapy.
Cell Mol Immunol. 2016 Jan;13(1):3-10. doi: 10.1038/cmi.2015.74. Epub 2015 Jul 20.
ヘルシーな日本食プラス新鮮な野菜や果物やサプリなどで日頃からしっかりサイトカインを上げないように心がけると、生活習慣病の予防やアンチエイジングにもなっていいとこ取り!ですね。
20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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