プチ断食でクローン病や潰瘍性大腸炎のような炎症性腸疾患(IBD)を改善させた!? (2019年米国研究)
健康情報
今回はプチ断食がは炎症性腸疾患(IBD)の治療に効果的であるという基礎研究データの発表がありましたのでご報告いたします。
南カリフォルニア大学(USC)のプレスリリース(英文)を翻訳しましたので、ここでご紹介します。
Cell Reportsに出版された原著論文はオープンアクセスなので全文を読んだりダウンロードできます 😄
(以下にリンクあり)
この記事のもくじ
ニュースタイトル「プチ断食療法は炎症性腸疾患を患う人々を治療するのに有望である、USC研究」
副題:臨床試験はヒトの炎症の軽減を示しています。 空腹時プチ断食はマウスのクローン病と大腸炎の病状を改善させているようだ。英文執筆者: Jenesse Miller
特別な食事で炎症を軽減し、腸を修復することができるとしたら?USC(南カリフォルニア大学)の研究者たちは、低カロリーの「プチ断食療法(fasting-mimicking diet)」がまさにそれを可能とするという証拠を提示しました。この研究はCell Reports誌の 3月5日版に発表されたもので、炎症を持つ人々のための食事療法の周期的サイクルの健康上の利点について報告、この食事療法がマウスにおける炎症性腸疾患(IBD, inflammatory bowel disease)の病状を改善させたことを実証しました。
この研究結果は、プチ断食療法が有益な腸内微生物叢(腸内フローラ)の増加を促進することによって、部分的に腸炎症の減衰および腸幹細胞の増加を促進したことを示すものでした。研究著者らは、マウスでIBD病状が回復したことは、ヒトの臨床試験で示されたその抗炎症作用と共に、この食餌療法がIBDを軽減する可能性を秘めていることを示唆していると述べています。
USCレナードデイビス老年学部のUSC長寿学研究所のディレクターでUSCドルンシフカレッジオブレターズ、アーツアンドサイエンス(Longevity Institute at the USC Leonard Davis School of Gerontology and professor of biological sciences at the USC Dornsife College of Letters, Arts and Sciences)の生物科学教授である本研究の主幹、ヴァルターロンゴ(Valter Longo)は、「この研究は、2つの研究の世界を組み合わせて行った初めてのものです」と述べています。「1つ目には、毎日食べるべきものに関する研究であって、それは野菜、ナッツ、オリーブオイルが豊富な食事療法を対象とする様々な研究です。2つ目には、絶食や断食が炎症や再生、そして老化に及ぼす影響についての研究です。」と述べています。
この研究グループは、この疑似絶食療法をこれらの研究分野を組み合わせることによって、腸疾患に関連する炎症と病状の緩和を可能にしました。
ロンゴ教授は、食餌療法が苦手な人々には、体が絶食している如く細胞を機能させる低カロリー植物ベースの食事を定期的に与える「たまの」調整があると述べています。ロンゴ教授らによって行われた初期の臨床試験では、実験参加者は5日間で1日当たり750〜1,100カロリーの消費を可能とし、特定の割合のタンパク質、脂肪、炭水化物を抑制しました。参加者には、生命を脅かす多くの病気の危険因子が減少しているのが見止められました。
ロンゴ教授は「断食は継続が難しく、危険なこともあります」として、「プチ断食は水のみの断食よりも安全で簡単であることを私たちは知っていますが、この研究ですごく驚いたのはプレバイオティック食材(オリゴ糖や食物繊維)でのプチ断食を水だけ断食に置き換えても同じ利点は得られないということです(プチ断食のほうが利点がある)」と述べています。
この研究では、ある群のマウスは、初日に通常のカロリー摂取量の約50%を摂取し、2日目から4日目までに通常のカロリー摂取量の10%を摂取することによって、4日間のプチ断食療法を維持しました。他のグループは、水だけの摂取で48時間絶食しました。
この研究では、4日間のプチ断食とそれに続く通常の食事で、炎症性腸疾患関連の病状や症状のあるものは緩和し、他のあるものは回復するのに十分であることが明らかになりました。対照的に、水のみを摂る断食ではそれが不十分であって、このことは、プチ断食中の特定の栄養素が断食療法の効果を最大化すべく必要な微生物的および抗炎症的変化に寄与することを示している。
ロンゴ教授曰く、『食物成分が有益な効果に寄与していることを我々は究明しました;人体の細胞についてだけではなく、それは空腹と食事の両方によって影響される微生物についても究明しました』、そして『食事の成分は「断食」がIBD(炎症性腸疾患)を良くする効果を最大限に高めてくれました』と。
研究チームは、幹細胞の活性化と、結腸と小腸での再生能力を観察しましたが、それは空腹を模倣している食事の複数のサイクルの存在下でだけ長さが著しく増加しました。 彼らは断食が体の改善のために体を刺激すると結論しました、しかしそれは細胞と組織を再建し組織する機会を提供する「回復食(re-feeding)」です。
ロンゴ教授は、「カロリー制限に関する過去100年間の研究において、レフィーディング(re-feeding)の重要性を誰も認識していなかったことは本当に驚くべきことです」として、「制約とは建物を破壊する解体のようなものです。しかしそれを再構築しなければなりません。そうしなければ何の利益もありません。何ら為す術もなく取り残され、そして何を達成したのでしょうか?」
現在および以前の研究において、著者らは炎症のマーカーであるC反応性タンパク質(CRP)の上昇、空腹時模倣食餌サイクルがCRPを減少させ、関連する白血球の増加を元に戻すことができることを示した。マウスでの結果と合わせて、これらのデータは、プチ断食療法サイクルがクローン病および潰瘍性大腸炎を含むヒトの炎症性腸疾患に対して有効である可能性があることを示しています。
炎症性腸疾患は推定160万人のアメリカ人を苦しめていますが、それは腸の急性および慢性の炎症を伴うものです。本研究論文の著者たちは、炎症性腸疾患を治療するためのプチ断食療法サイクルの使用を含む無作為化臨床試験が、ヒトにおけるこれらの食事療法の安全性と有効性を見極めるために必要であり、現在その臨床試験プロトコルを完成すべく取り組んでいると述べています。
引用ニュース & 原著論文
🔵 英語ニュース:Fasting-mimicking diet holds promise for treating people with inflammatory bowel disease, USC study finds(University of Southern California)March 5, 2019🔵 原著論文(オープンアクセス;全文が閲覧できます) : Fasting-Mimicking Diet Modulates Microbiota and Promotes Intestinal Regeneration to Reduce Inflammatory Bowel Disease Pathology
Cell Reports, Rangan and Choi et al. (DOI: 10.1016/j.celrep.2019.02.019)
Seigoの追記
原著論文のページにハイライトという要点をまとめたものがありますが、そこでプチ断食をした時にどの種類の腸内フローラが増えたかが書いてありました。プチ断食によって増える菌
・Lactobacillaceae(乳酸桿菌科)乳酸菌など
・Bifidobacteriaceae(ビフィドバクテリウム属 )ビフィズス菌など
プチ断食のスケジュール
オープンアクセスなので原著論文の中身を見てみますと、プチ断食のスケジュールと内容が書いてありました 😄書いてあるのは原著論文の中ほどの「STAR★Methods」と書いてあるセクションで「 Human fasting-mimicking diet(人用のプチ断食ダイエット) 」の所です。以下に訳したものを下に示します。
– 1日目は1日当たり〜4600 kJ(11%タンパク質、46%脂肪、43%炭水化物)を供給しますが、
– 5日目は1日あたり〜3000 kJ(9%タンパク質、44%脂肪、47%炭水化物)を供給します。
– ブチ断食は、野菜ベースのスープ、エネルギーバー、エネルギードリンク、チップスナック、茶、およびミネラル、ビタミン、必須脂肪酸を含むサプリメントの独自の処方で構成されています。翌日の誤った成分の消費を避けながら、被験者がいつ食べるべきかを選択できるように、1日に消費されるすべての品目は個別に箱詰めされました。
試験食物がいつ摂取され得るか(すなわち、朝食、昼食、軽食、および夕食)を記載した食事計画案が提供されました。
プチ断食の内容
書いてある場所は上の「 Human fasting-mimicking diet(人用のプチ断食ダイエット) 」のすぐ下の「 Ingredients(材料) 」に書いてありましたので、訳したものを下に示します。材料
野菜スープ:米粉、干しタマネギ、イヌリン(チコリ繊維)、干しニンジン、塩、干し赤ピーマン、干しネギ、ポテトスターチ、オリーブオイル、凍結乾燥バジル、ほうれんそう粉、干しパセリ、自然の香り。
きのこのスープ:米粉、にんじん粉、干しタマネギ、シャンピニオンきのこ粉、イヌリン(チコリ繊維)、干しシャンピニオンきのこ、塩、酵母エキス、ジャガイモデンプン、オリーブオイル、干しパセリ、天然フレーバー。
トマトスープ:米粉、干しトマト粉、干しタマネギ、イヌリン(チコリ繊維)、干しトマト片、オリーブオイル、塩、酵母エキス、干しバジル、干しパセリ、天然フレーバー。
エナジードリンクミックス:精製水、天然植物性グリセリン、ポリリジン(天然保存料)。
エネルギーバー:アーモンドミール、マカデミアナッツバター、ハニー、ピーカンナッツ、ココナッツ、亜麻仁ミール、ココナッツオイル、バニラ、シーソルト。
チップスナック:ケール、赤ピーマン、カシューナッツ、ヒマワリの種、栄養酵母、レモンジュース、カイエンペッパー、海の塩。
藻油(Algal Oil):ゼラチン、グリセリン、精製水、ウコン(色)、アナットエキス(色)。
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私はスープに小麦粉を使わないで米粉を使っているところが気に入りました。小麦粉はグルテンが腸の炎症を増してしまいますからね。さすがカリフォルニアです! 酵素ジュースなどを普段から飲んでいる方がこのプチ断食のメニューを考えたのでしょうか? レベルが高いです!
日本にもこういうプチ断食が気軽にできるバーやレストランが増えるといいですね!
あっ、日本でコンビニでフレッシュな酵素ジュースが飲めるようになれば一番お手軽ですね。
早くそうなるようにこのサイトでも普及活動に勤めます 😀
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20余年アメリカで遺伝子治療&幹細胞の研究者をやってきました。
特に遺伝病の間違った遺伝子をピンポイントで修復し、元に戻す技術開発です。
理学博士(Ph.D. )
アメリカ生活で学んだアンチエイジングなど健康に関する知識をシェアしたいと思います。
巷の情報もご紹介、時にはブッた斬ったりしてしまうかもしれません。
またポイントなどの節約術や生活に便利なガジェット(スマホやアプリの紹介)も記事にしますので参考になれば嬉しいです。
皆さん、ご一緒に「究極のヘルシーライフ」を楽しみましょう♪
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