造血幹細胞が若返り現象が世界で初めて観察された(ヒトではなくマウスの細胞で)《論文速報シリーズ》

ニュース/レビュー

*上の図の説明:造血幹細胞からすべての血液細胞が分化してくることを表した図 《 出展:By Panzer VI-IIOwn work, CC BY-SA 4.0, Link(Wikimedia Commons)》

造血幹細胞に関する良いニュースなので、造血幹細胞の研究をしたことがある身としては是非このニュースに触れたいと思います。


年取った造血幹細胞が若いマウスに移植したところリンパ球を作る能力を取り戻した

造血幹細胞は全ての血液系の細胞を作ることができる親玉の幹細胞です。

この幹細胞は一生涯にわたり私たちの血液を作り続けますが、免疫系の老化など造血幹細胞の老化と関係しているのではないかと言われています。

というのもの造血幹細胞が老化してくると、リンパ球であるB細胞やT細胞が新たに作れないため免疫系が老化するのではないかと推察されてきました。

リンパ球を作れなくなった造血幹細胞を若いマウスに移植して、さらにもう一度別の若いマウスに移植したリンパ球再び作れるようになったということです。

つまり「造血幹細胞のリンパ球を作る能力は不可逆的である」と、中内先生のグループは結論づけております。

私も同じ結論を考えていますが、この現象でキーになっているのはニッチを作っている細胞ではないかと考えております。

ニッチとは造血幹細胞が細胞分裂をやめてお休みする場所みたいなところですが、ニッチにある細胞が老化する二次的に造血幹細胞も老化するのではないかと考えています。

しかし老化した造血幹細胞を若いマウスに移植て若いニッチの環境に老化した造血幹細胞が接したら、はたして造血幹細胞が若返るだろうかという疑問に答えたのがこの論文だと思います。

結果女神は微笑んで造血幹細胞は若返り、リンパ球を作る能力を取り戻しのでありました。

これは将来、iPS細胞を使わなくても少なくとも造血幹細胞だけは若返らすことができる可能性を含んでおります。

そして上手くいけば、免疫系を強化ができますのでがんになる確率も減るでしょう。

また造血幹細胞の分化能をコントロールできる可能性もあるので白血病なども防ぐことができるかもしれませんね

いいニュースですね、乾杯!

Seigo

発表論文:全文がジャーナルホームページからダウンロード可能 →  ”Large-Scale Clonal Analysis Resolves Aging of the Mouse Hematopoietic Stem Cell Compartment” Cell Stem Cell, 2018, Apr 5;22(4):600-607

プレス発表:「加齢に伴う造血幹細胞の増加と特異な機能変化を発見」東京大学

新聞のニュース:老いた細胞、若いマウス移植後「若返り」 東大など研究(朝日デジタル)

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